はじめに
ここでは、『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.3「死者の楽園」』をクリアした感想をつらつら書いていきます。
※ストーリーの核心部分のネタバレはありませんが、クリア後の観点から書いているのでややネタバレ注意です
本作は癸生川凌介シリーズ3作目にあたる作品で、数年前に凄惨な事故が起こったとある遊園地を舞台に、次々と引き起こされる殺人事件に癸生川達が挑むという内容になっています。
3作目ということもありシリーズも軌道に乗ったためか、前作キャラの再登場や新たな敵の到来、(事件自体は本作で完結しますが)露骨に次回作を匂わせるなど、シリーズを膨らませていくような部分が多いです。
なので癸生川シリーズとして見ると結構面白くなってきたなという感じなんですが、肝心の事件内容がちょっとあれで・・・。
詳しくは後述します。
ゲーム概要
ストーリー
2003年夏。
いつものようにゲームに使えるネタを求め、癸生川探偵事務所を訪ねたシナリオライターの王生。
すると事務所には既に先客が来ており、癸生川の助手である伊綱がその女性客に応対していた。
女性の名は菊川。
彼女は、巷で話題のテーマパーク「シャングリラ」を経営する社長の秘書であり、今回はそのテーマパーク絡みのことで事務所へ依頼するために来たという。
その依頼とは、「シャングリラへ脅迫状を送りつけてきた人物を見つけて欲しい」というもの。
聞くと一昨日の夜、とあるアトラクションでちょっとしたボヤ騒ぎがあり、ボヤ自体は軽微なものだったのだが、その近くで脅迫状が見つかったというのだ。
単なるイタズラとして処理してしまいたいところだが、わずかとは言え実害も出ているため、なるべく騒ぎを大きくしないうちに癸生川達に事態の収拾を依頼したいとのこと。
事情を聴いた伊綱は、王生と共に早速調査に乗り出す。
だが、調査を進めていく中で、脅迫状をなぞらえるかのように次々と殺人事件が起こり・・・。
本作の特徴
オーソドックスなテキストADV
癸生川シリーズは、コマンド選択形式のオーソドックスなテキストアドベンチャーとなっている。
各地を移動しつつ関係者に聞き込みをしたり、周囲を調べて証拠や情報を集めたりなどして、事件の解決を目指す。
また、ストーリーは章ごとに分かれており、各章の冒頭にはこれまでのあらすじが挿入され、プレイ中も要所要所で事件のまとめや今後の捜査方針を話し合うなど情報整理が比較的多くあるため、事件内容が整理しやすい。
遊園地で起こる殺人事件
今作の舞台となるのは、大型テーマパーク「シャングリラ」。
この遊園地には、巨大ジェットコースターがある巷でも有名なプレイスポットなのだが、血で書かれた脅迫状が届いたことをきっかけに、次々と殺人事件が起こる血生臭い舞台となっていく。
脅迫状の内容通りに殺されていく被害者たち。
殺人を裁きと宣う脅迫状の送り主。
果たして犯人は誰なのか。そしてその動機は。
過去に起こった凄惨な事故も絡みつつ、事件は徐々に膨らみを見せていく。
感想
良かった点
フォローに回った癸生川
前作『海楼館殺人事件』では、伊綱(とプレイヤー)が導き出した推理に対し、後からやって来た癸生川がそれを全否定しつつ真実を導き出すという、ちゃぶ台をひっくり返すような釈然としない構成でしたが、今作ではそれが大きく改善されていました。
今作でも、癸生川は四六時中一緒というわけではありませんが、一応事件現場には(遅れてだけど)来てますし、解決パートでも伊綱の推理を否定することなくむしろ補強するような動きを見せてるしで、伊綱(とプレイヤー)のお株を奪うことがなくなってて好印象でした。
まぁ美味しいところはしっかり決めてますが。
自分はリアルタイムでプレイしていたわけではないんですが、ここが改善されているということは、やっぱりガラケーアプリとして配信されていた当時でも似たような批判があったんでしょうね。
それをしっかり改善してきたスタッフさん方は偉い。
シリーズとして膨らんできた
今作では、次回作以降の展望を匂わせる要素がちょいちょい出てきており、シリーズが軌道に乗ってきた感じがありました。
3作続いたこともあって、今後も続けていけそうだという手ごたえがあったんでしょうね。
事実4作目以降もシリーズは続いていくので、反響はそれなりにあったんだなと推察できます。
ただ、今作は肝心の事件内容が正直・・・。
以下悪かった点で後述します。
悪かった点
いささか簡単な事件
今作の事件は正直言って分かりやすいです。
プレイしている最中に容易に犯人が分かってしまうレベル。
「あーこの人が犯人だろうな」と思ってた人が、何の捻りもなく本当に犯人だったというあまりにも順当すぎる流れでした。
実際トリックやらアリバイ工作やらが分かりやすすぎて、何らかのミスリードを誘ってるのかなと疑ってかかってたんですが、特にそんなことはなかったという。
普段この手の推理ゲームをプレイしている方はもちろん、あまり触れたことのない方でも犯人が誰なのか察してしまうと思います。
あと犯人も、いくらでも言い逃れできる状況なのに、自分がやったとあっさり白状してしまうので、その点も味気なかったですね。
今回の事件はなかなかに後ろ暗い背景が絡んでいるので、テイスト自体は割と好きではあったんですが。
ボリューム不足
上記の点と少し関連しますが、事件内容がシンプルなだけに捜査パートや推理パートがスイスイ進んでいくこともあって、結果的にボリュームは薄く感じられました。
前作は2時間、前々作は1時間半程度かかったのに、今作は割とのんびりやっても1時間15分でクリアでしたからね。
一章は捜査パートがほぼなく、話を聞いているだけで進んでいく流れになっているのもボリューム不足に拍車をかけているのかなと。
読むスピードが速い人がプレイすれば、多分1時間切るんじゃないかと思います。
おわりに
以上、『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.3「死者の楽園」』のクリア後レビューでした。
シリーズの中の一作として見ると今後に期待できる内容でしたが、肝心の事件が少々拍子抜けだったなというのが率直な感想です。
前作はどんでん返ししすぎでしたが、今作は逆にそれがなさすぎだったかなと。
「どっちにしろ文句言ってるやんお前」って感想になっちゃってすみません
やっぱり推理ものは、読み手の推理をほどほどに裏切ってなんぼだと思うので、次回はそれに期待したいです。