はじめに
ここでは、『ロストジャッジメント 裁かれざる記憶』をクリアした感想をつらつら書いていきます。
※クリア後の観点から書いているのでネタバレ注意です
本作は、2021年にSEGAから発売されたサスペンスアクションゲームで、ナンバリングこそありませんが事実上『ジャッジアイズ』の続編となっています。
前作同様キムタク演じる主人公の八神を操作し、とある高校のいじめに関する依頼に携わったことを皮切りに、過去に起こった凄惨ないじめ、ひいてはそこに潜む真実と闇に八神がぶつかっていくというドラマ並のサスペンスな作品です。
取り扱う題材が題材なので、精神的な意味できつい展開が多いですが、クオリティは折り紙つき。
ストーリー重視でゲームを選ぶ方は、プレイしてみて損はないかと思います。
と、前置きはほどほどにして以下本題。
ゲーム概要
ストーリー
2021年12月、東京・神室町。
いつものように探偵業に勤しんでいた八神のもとに、1本の電話がかかってくる。
電話の主は杉浦で、その内容は「先日自分たちが引き受けた依頼を手伝って欲しい」というもの。
聞くと杉浦は、九十九とともに横浜の伊勢佐木異人町で探偵事務所を開いたらしく、そこで誠稜高校という私立高校の理事長から、「いじめの実態調査」を依頼されたのだという。
だが、高校の調査をするには人手が足りず、協力を仰ぐため八神に連絡したとのこと。
事情を聞いた八神はこれを快諾。
相棒兼助手の海藤とともに横浜・異人町へと向かい、調査を開始する。
八神隆之―本作の主人公。元弁護士の探偵
海藤正治―八神の相棒。元極道で八神とは旧知の仲
杉浦文也―八神達の仲間。九十九とともに横浜に探偵事務所を開く
九十九誠一―八神と親しい情報屋。杉浦とともに事務所を構えそこの所長を務める
数日後。ところ変わって東京地方裁判所。
この日、現職の警察官が起こした痴漢事件に関する裁判の判決が下されようとしていた。
判決は懲役6月執行猶予なしの有罪。
初犯にも関わらず重い判決となったが、被告の男―江原は不適な笑みを浮かべ、裁判官の言葉を遮り、こう発言した。
「3日前に横浜の廃ビルから、身元不明の腐乱死体が出てきたと思う。その死体の主は御子柴弘。私の息子を自殺に追いやった死すべき人間だ」
と。
調べを進めると、確かに3日前に見つかった死体の身元は江原の言った通りであり、そして被害者の御子柴は、かつて誠稜高校の生徒―八神達が調査をしている高校の卒業生であった。
いじめと報復殺人。
一つの依頼にすぎなかったいじめ調査をきっかけに、八神は知られざる闇へと深く潜り込んでいく。
本作の特徴
舞台は神室町と異人町
本作の舞台は神室町と、『龍が如く7』の舞台となった横浜異人町が新たに加わった。
これら2つの町を行き来しつつストーリーが進行していく。
また、拠点に関しては、神室町では前作と同様「八神探偵事務所」が、異人町では九十九と杉浦が設立した「横浜九十九課」が拠点になる。
3つのスタイルを駆使するバトルシステム
戦闘では、「一閃」「円舞」「流」という3つのスタイルを駆使して戦う。
「一閃」はタイマンが得意なスタイル。
パワフルな高火力攻撃が持ち味であり、1対1のボス戦などに強い。
ガード貫通の攻撃も有しており、スキルを習得していけば3スタイルの中で最もバランス良く戦える。
「円舞」は集団戦に優れたスタイル。
多くの敵を巻き込んで攻撃することに優れており、弱攻撃で攻撃を絶え間なくループさせられるため、集団戦では重宝する。
回避性能も高く、連続回避や「舞空」という上空での回避が可能。
「流」は今作から新たに追加されたスタイル。
その名の通り受け流しが大きな特徴であり、敵の攻撃を受け流すことで後ろを取ったり、条件次第で敵の武器をはたき落としたりすることが可能。
また、受け流した敵や戦意を喪失した敵は一定確率で「恐れ状態」になり、この状態の敵は一撃で戦闘不能にできる。
パワーアップした調査アクション
前作にもあった尾行や撮影、ピッキングといった探偵要素は今作も健在。
不評だったためか実際に調査する機会は減ったが、一部には新要素が追加された。
新要素一つ目はスティール。
これは敵地に潜入し、見つからないように目的地到達を目指すアクション。
敵の目を掻い潜るためにアイテムやコインで敵の注意を引き、必要があれば後ろから気絶させるなどスニーキングが求められる。
新要素二つ目はガジェットの追加。
今作ではドローンに加え、探知機や集音器といった調査道具が登場。
ストーリー中ではあまり使う機会はないが、主にサイドケースやリスの絵探しなど必要に応じて使っていくことになる。
高校を舞台に繰り広げられるユースドラマ
今作の目玉要素。
今作では事件調査のため、八神が「外部指導員」という形で高校に潜入することになる。
最初はミステリー研究会―通称ミス研の外部指導員を務めることになるが、ミス研の部長である天沢という生徒から、「プロフェッサーと呼ばれている生徒を非行へ走らせる謎の人物の調査」を依頼され、そこから様々な部活やグループに潜入し、プロフェッサーの調査を進めていく。
このようにして、潜入先ごとに展開されていくストーリーは「ユースドラマ」と呼ばれる。
ユースドラマは本編からは完全に独立しており、事実上のサブイベントに該当。
そのため、進めるか否かは完全に自由となる。
また、ユースドラマでは、部活やグループによってそれぞれ固有のミニゲームが用意されており、ダンス部であればリズムゲーム、ロボ部であればロボコンというように、ミニゲームをクリアしながら先に進めていく。
感想
良かった点
意欲的なストーリー
ストーリーは先を読ませずグイグイ引き込まれます。
テーマがテーマだけに重苦しいんですが、前作と同様に「それでも早く先が見たい」と思わせる牽引力が最後まで強かったのは流石だと思いました。
やっぱり構成力と展開の見せ方はすごいですねこのシリーズ。
まぁ高校への潜入がメインとなる序盤は、いじめの調査方法が杜撰だったり、いじめの解決方法が確実性の薄い結果オーライなものだったりと、全体的にガバガバ具合が目立ってて不安でしたが、そこさえ抜けたら「これはひどい」と思えるものはなかったかなと。
また、物語の軸になる八神と桑名のぶつかり合いは、見ていて色々と胸に去来してくるものがありました。
両者とも、
いじめは悪。いじめ加害者は罰せられるべき
↓
しかし全ての加害者が罰せられるわけではない
↓
今の法には限界がある
ここまではほとんど共通の見解なのに、法がより良くなっていくことを信じる八神に対し、「不完全な法に任せるくらいなら俺が報いを受けさせる」と自らの手を汚す桑名というように、二人のスタンスはどこまでも平行線を辿ります。
どちらも決して間違っていないからこそ難しい問題です。
それだけに、楠本玲子(いじめが原因で自殺未遂をし13年間植物状態の息子がいる)が放った、「(法的な裁きを受けず反省もしていない加害者を見て)殺してはならない理由を見失った」という当事者からの重い言葉は強く印象に残りました。
理屈じゃない人の思いを、法が受け止め切れていないのが悲しい。
「加害者全てが裁かれるわけではない。でもだからといって報復するのは法的にアウト。なら被害者の行き場のない思いはどうなる?」
こういった問いに対する答えは、少なくとも自分達が生きている間に出ることはないんでしょうね。
劇中で海藤さんも「お前ら二人どっちが正しいか答えなんてあんのか?」と言ってましたが、まさにそんな白黒つけられない問題にしっかり向き合った意欲的なストーリーだったと思います。
本編並にボリュームがあるユースドラマ
学校を舞台に繰り広げられる今作の目玉要素の一つユースドラマ。
これが本編と同じくらいボリュームがあって面白かったです。
というかまさかほぼ全ての部活に固有のミニゲームが用意されているとは思いませんでした。
スタッフの気合いの入れようを感じましたね。
個人的には、ゲーム部分だとダンス部のリズムゲーとボクシングのスパーリングが好きで、ストーリー面だとロボ部と暴走族が好みでした。
ロボ部はイメージとは裏腹に正統派王道路線、暴走族はギャグとシリアスが上手いこと同居しているテイストで、どっちもミニゲームは辛かったけど先が見たくて頑張って進めてました。
また、終盤のプロフェッサーの正体判明から一連の事件が決着するまでの流れは、正直先が見えまくりのベッタベタな展開ですが、だからこそシンプルに熱くてよかったですね。
本編がしこりのあるエンディングを迎えた分、こちらの方はまっすぐ爽やかに終わったので、上手く差別化ができていたと思います。
どっちも歯切れ悪いエンドとか最悪ですし。
雑魚戦に旨味ができた
今作では雑魚からスキル習得に必要なSPが多く入手できるようになったため、戦うメリットができました。
前作は旨味ほぼゼロで、基本逃げてばっかだった覚えがあります。
それを考えたら大分改善されたなぁと。むしろ前作がおかしかったとか言ってはいけない
しかもSPもスズメの涙とかではなく、SP獲得に補正が入るスキルをしっかり習得すれば、その辺の雑魚からでも結構もらえるので、今作は割と積極的に喧嘩売ってましたね。
金策が楽
あくまで個人的な体感ですが、今作は大分金策が楽だなと思いました。
普通にちょろっとサイドケースをクリアするだけでも10万ぐらい稼げますし、VRすごろくも相変わらず旨味があり、チュートリアル的なのをクリアするだけでも40万ぐらい稼げたりと、無駄遣いをしても金に困ることはなかったです。
特に(解放までが少々長いですが)カジノに行けるようになると、とにかく金策が楽になります。
ブラックジャックでイカサマアイテムを使えば、5分足らずで200万ぐらいポンっと稼げるのはお手軽すぎる。
それを元手にボクシングやロボ部のパーツで散財しまくってました。
やっぱゲームでも先立つものは金やで金!(クズ野郎)
悪かった点
一部のキャラの描写が不満
これはキャラそのものの好き嫌いや良し悪しとかではなく、メタ的な意味で「それはちょっとどうなの?」と思った点。
個人的には、八神、相馬、星野君に気になった描写がありました。
まずは八神。
何と言っても後半で澤先生botと化したのは気になりましたね。
正直あれが気にならなかった人は多分いないんじゃないでしょうか。
「澤先生の死から目を背けようとしているその一点だけで桑名とは相容れない」のを強調しているのは分かるんですが、流石に連呼し過ぎかなと。
澤先生に対してかなりの罪悪感を抱いている桑名ですら、「くどい!」「お前はそればっかりだな」と言われる始末だし。メタ的にはそう言わされてる感がありますが
桑名とは相容れない理由として、澤先生の件の他にも何か強い根拠があればよかったんですが。
あと、あれだけ澤先生澤先生言ってたわりに、その後の先生へのアフターフォローが特に何もなかったのもなんだかなぁと。
エンドロールの後に、澤先生の墓前に手を合わせる八神のシーンがあってもよかったんじゃないかと思います。
それプラス妄想を言うなら、「手を合わせる八神を遠巻きに見た後、去っていく桑名らしき人影」みたいなのもあったらなぁ、なんて思っちゃいましたね。
続いて相馬。
相馬は最後普通に捕まっただけで、「群れの裏切者」としての制裁がなかったのが残念でした。
作中において度々用いられる「群れの裏切者」という表現に一番ピッタリなのが相馬だと思ってたので、相馬に対する制裁はどんなのが来るか期待してたんですが・・・。
澤先生の件もあるので殺す必要はないものの、RKの面々にボコボコに殴られる描写は欲しかったですね。
特に元東城会の人間からすれば、相馬の行為は裏切りどころか虚仮にしてるようなものなのに。
そういう意味では、阿久津退場はちょっと早かったかなと。
本編だと阿久津は相馬の正体を知った直後に殺されましたが、知った上で生存していたらどう動いたのか見てみたかったです。
最後は星野君。
星野君は「前作の成長なかったことになったの?」って思うほどに活躍がなく、この点は残念を通り越して違和感すら覚えました。
どっかで見せ場あるんだろうなと思ったら結局最後までなかったのはズッコケましたね。
まさか東以上のギャグ要員ってだけで終わるとは・・・。
「出番は多いのに活躍がない」って一番悔しいパターンじゃないでしょうか。
もし次回作があるなら、次はしっかり星野君の見せ場を用意していただきたいです。
ユースドラマの一部ミニゲームが苦行
ユースドラマは話自体は面白いものが多いんですが、ミニゲームは結構辛いのが多いです。
特に話が面白いロボ部と暴走族はなかなか苦行でした。
ロボ部はロボコン全国制覇を描くシナリオですが、まず試合数が多い。
練習試合やら予選やらで結構対戦させられます。
その上、コンスタントにロボを強化していかないとスペック差で蹂躙されるので、一度戦った相手と何回か戦って素材を入手して、それを使ってパーツを作るというハクスラみたいなことをそこそこやらないといけません。
この辺は無駄に作り込まれてます。もっとシンプルでよかったのに・・・。
しかも(現在はアプデで多少緩和されましたが)、アプデ前は入手素材が少なくポケットマネーをはたいて素材買わないとやってられないレベルだったので、ほんときつかったですね。
金策が楽でほんとよかった・・・。
まぁ金でどうにもならない上に無駄に要求数が多い豊潤なオイル集めが一番の鬼門でしたが。(これもアプデで緩和済み)
あくまでミニゲームなので楽にクリアさせてほしかったなと。
暴走族も似たような感じで、目的を達成するためにデスレースという妨害ありのレースゲーを何回か勝ち抜かないといけません。
これがロボコン以上に面白くなく、ほんと文字通りの作業でした。
やることと言えば、雑魚倒してボスより速く1周走って終わりですからね。これなら普通のレースゲーでよかった。
まぁロボ部と違ってハクスラはないし、カスタマイズもデスレースも考える要素がほとんどなかったのは救いかな。
アスレチックがしょぼい
今作から登場したアスレチックですが、正直しょぼくてあまり楽しめませんでした。
縦横無尽に駆け上がれるわけではないし、操作性はそこまで良くはないし、全体的に動きがリアル寄りでモッサリしてるしで、個人的には割と辛かったです。
特に杉浦が同行している時、杉浦がめっちゃ機敏に登ってった後、後から「うんしょ、うんしょ」と登っていく八神の姿には悲壮感すら覚えました。
『アサシンクリード』や『アンチャーテッド』のようにパルクールが爽快なゲームをプレイしたことがあるなら、今作のこれはどうしてもちゃっちく感じてしまうと思います。
戦闘の時みたいに、リアル度外視でもっと外連味ある動きが欲しかったですね。
おわりに
以上、『ロストジャッジメント 裁かれざる記憶』のクリア後レビューでした。
綺麗に収まった前作とは違い、各々の正義がぶつかり合うという内容上、一部煮え切らない部分もある作品でしたが、やはりクオリティは高かったと思います。
プレイ前はそれなりに期待値が高かったものの、期待通り面白かったですね。
ちなみに、プレイ時間は、
・ユースドラマコンプリートまでに48時間半
・本編クリアまでに51時間
かかりました。
サイドケースはほとんど触ってませんが、プレイスポットなんかで大分寄り道したので(ゲーセンとバッティングセンターに入り浸ってました)、結構時間かかった方だと思います。
でも、寄り道なしでも本編とユースドラマの両方を終わらせようと思ったら、40時間ぐらいはかかるのかなと。