はじめに
ここでは、『プレイグテイルイノセンス』をクリアした感想をつらつら書いていきます。
※クリア後の観点から書いているのでネタバレ注意です
本作は2019年にAsobo Studioというフランスのゲーム会社から発売されたゲームで、ペスト(黒死病)が流行し始めた中世のフランスを舞台に、二人きりとなった姉弟が疫病や異端審問官の魔の手から逃れるべく時には隠れ時には戦うというステルスアクションとなっています。
ちなみに、正しいタイトルはブレイグでもブレイブでもなく「プレイグ」です。
初見は間違いやすいので、検索する時は注意しましょう。自分は最初ブレイグだと思ってました・・・
ゲーム概要
ストーリー
1348年、フランス。
名の知れた騎士の家に生まれた少女アミシアは、尊敬する父と謎の病気が原因でほとんど会ったことのない弟、そして弟の治療のため日夜研究を行っている錬金術師の母と静かに暮らしていた。
ところがある日、突如として異端審問官が家を訪れ、弟の身柄の引き渡しを要求。
これを拒否した父は殺され、母はアミシアと弟を敷地の外へと逃がすと自ら囮を引き受け、姉弟は母と離れ離れになってしまう。
こうして弟とともに追われる立場となったアミシアは、異端審問官から弟を守るため、そして弟の身体を蝕む謎の病気を治すため、いつ終わるともしれない逃避行を始めるのであった。
本作の特徴
暗黒期の中世フランスが舞台
本作の舞台は14世紀中ごろの中世フランス。
当時のフランスは、百年戦争(英仏戦争)とペストの流行により土地も人々の心も荒廃した暗黒の時代とも言うべき様相を呈しており、全編にわたって非常に陰鬱。
ペストによりそこかしこで人間や動物の死体が山積みのまま放置されていたり、家族の死が原因で暴徒と化した村人が感染者を火あぶりで処刑していたり、不安定な情勢に乗じて宗教勢力(異端審問官)が陰に日向に跋扈するなど、テイストとしてはダークな色が濃い。
「敵に発見される=ほぼ死亡」のステルスアクション
本作は姉弟の逃避行というのがゲームの軸の一つであるが、二人とも戦いに関しては素人&操作キャラとなるアミシアは5歳の弟を連れて行動することになるため、戦闘は極力ステルスで回避するのが基本となる。
一応攻撃手段は全くないわけではなく、投石器であるスリングや特定のアイテム(かなり希少)による反撃も可能。
特にスリングは序盤から終盤までずっとメインウェポンを張り、こと遠距離に関してはエイムアシストの優秀さもあって命中精度が高く、こちらに気づいていない敵を倒すこと自体は容易。
が、正面からの戦闘には不向きであり
・スリングは発射までに時間がかかる上に発射の際音が鳴るため、近くに敵がいると高確率で見つかる
※強化していけばこのデメリットは軽減される
・近接攻撃の手段がほぼ皆無で接近されるとなす術がない
・敵の移動速度がこちらよりも速い
・本作は一部を除きHPという概念がなく、攻撃を一撃でも食らえば即死亡となる(弓矢ですら一発でアウト)
といったゲームバランスにより、敵に発見されることはほぼゲームオーバーを意味する。
なので必然的にステルスに比重を置かなければならない。
クラフトとアップグレード
実質的な育成要素。
本作では行く先々に様々な素材が落ちており、これを入手して組み合わせることで攻略に必要なアイテムを作成したり(クラフト)、武器の強化あるいは素材を保管しておくポーチの容量を増やしたりすること(アップグレード)ができる。
ただし、クラフトはいつでもできるがアップグレードは特定の作業場がなければ不可能なため、時には歯がゆい思いをすることも。
※アップグレードを進めれば作業場がなくてもできるようにはなる
ネズミ(カミツキ)という脅威
本作の象徴と言っても過言ではない要素。
このゲームでは人間の他に敵として、ペストの元凶であるネズミの大群(作中では「カミツキ」と呼ばれる)が随所に登場し、姉弟に襲いかかってくる。
ネズミは暗がりを好み光を忌避するため、ネズミがいるエリアではいかに光源(松明や灯)を確保できるかが生死を分ける。
場合によっては人間の敵がいるエリアにネズミが出没することも少なくないが、ネズミはこちらにも敵にも与さない言わば第三勢力であり、上手く利用すればネズミに敵を排除させることも可能。
感想
良かった点
ステルス重視のバランス
本作はその気になれば敵を殲滅できるよ的なゲームではなくまぁ終盤は簡単にできるようになりますが、敵をなるべくスルーしないとジリ貧になるバランスになっており、ステルス要素が強めです。
なので敵を倒す爽快感よりも上手く敵をスルーできたという達成感の方が強く、ちょっとしたパズルゲームを解いた時のような感覚を味わえます。
人によりけりだと思いますが、この点は単純によかったと思いました。
体感としてはラスアスから戦闘手段を極力抜いたような感じなので、過度にアクション要素のあるステルスは飽きたという方にはおすすめできるかと。
リトライがしやすい
このゲームはチェックポイントが非常に多く、ゲームオーバーになっても直前からやり直せる(しかもロードは短い)ので、トライアンドエラーがかなりしやすいです。
攻撃を一発でも食らえば即死亡というバランス上、ちょっとの凡ミスがゲームオーバーに直結するため、こういったリトライの手軽さはかなりありがたかったなぁと。
背景描写のリアルさ
本作は特にグラフィックが飛び抜けて綺麗というわけではありませんが、陰鬱な時代背景を忠実に再現しており、一言で言うと生々しいです。
特に匂い立つようなコンセプトアートをそっくりそのままゲームに落とし込んだ感は秀逸で、実際開発スタッフはフェルメールやブリューゲルなどの絵画を参考にして作成したとのこと。
フォトモードもしっかりあり、久々にスクショするのが楽しいゲームでした。
悪かった点
空間スケールが小さくなっていくストーリー
これは欠点という意味での悪かった点というわけではなく、自分が残念だと感じた部分。
本作は大まかに言うと「弟を狙う異端審問官からの逃避と弟の病気を治すための旅」というストーリーで、ストアやアマゾンなどの製品紹介ページでは「安住の地を求めて逃避行をする」という風に書かれています。
で、自分は「あーそうやって暗黒時代のフランスをさすらう感じの物語なんだな」と認識した上で本作をプレイしたわけなんですが、ニュアンスをちゃんと分かっていなかったというかなんというか、厳密な逃避行の旅と言えるのは中盤までで、それ以降(最終ステージ直前まで)は隠れ家に潜伏しつつ治療法を模索するという展開になっており、空間的な広がりが途中からトーンダウンしてしまいます。
一言で言うなら「前半は逃避行で後半は潜伏生活」という感じ。
自分はてっきり初代ラスアスみたく「目的地までの長い旅路を描く」みたいなのを勝手に想像してたこともあって、この点は残念でした。
ストーリーでワクワクできたのは隠れ家となる城跡に辿り着くまででしたね。
もっと暗黒時代の中世フランスを歩き回ってみたかったです。
また、弟の病気の正体と黒幕が分かるとその後の展開が想像できてしまい、なおかつその想像が特に裏切られることがなかったのもなんだか味気なく思いました。
なんか順当に話が進んで順当に終わったなという感じ。
肝心の黒幕も「俺がこの国を支配する」的なよくいるタイプの悪党なのに加え、石3つ当てれば倒せるのがまたなんとも・・・。
ストーリーが好評な本作ですが、個人的には「ザ・無難」という印象を最後まで拭えなかったです。
敵AIがガバガバ
基本的に敵は目と頭が悪いです。
十数mぐらい先に敵がいてこっちが目の前を素通りしても、怪しまれこそするものの探しに来ないなんてのはザラ。
その上気配を察知する能力は死んでるらしく、後ろを通り抜けても、というより真後ろに立っても一向に気づかれません。
兵士でもなんでもない素人の姉弟にすら気づかない敵って・・・。
が、一方で弓兵は異常に目が良く、3、40m離れていてもこちらが少しでも不用意に姿を晒すとすぐ見つけ出して攻撃してくるという極端な有様。
でもやっぱりAIは馬鹿で、弓兵がこちらに気づいて攻撃してるのに周りの兵は見向きもしないなんてことはよくあります。気づく時は気づくんですが・・・。
ステージ構成は普通にやったら難しいんだろうなっていうステージは多いものの、AIの馬鹿さ加減に救われることも多かったですね。
「止まって」のコマンドいる?
ゲームでは弟をその場に留まらせて単独で行動できるようになる「止まって」というコマンドがあります。
言い方は悪いですが弟は基本的に足手まといなので、このコマンドを使用して弟とは別行動をし、その間に自分が敵を排除したりギミックを解いたりして回避ルートを構築する・・・という使い方をして欲しかったと思われますが、ぶっちゃけ全く使わなかったです。
確かに弟は終盤まで足手まといですが、別に弟を連れていてもアクションが制限されることはないし、ここで待てと弟に指示しても、距離をとると「置いてかないで!」と叫ばれてしまってむしろ不利になるという。
ものは試しと序盤に一回使ってみたことはありましたが、その後明確な意図をもってこのコマンドを使ったことは結局一度もありませんでしたね。
上手く使えば攻略が楽になるとかあったんでしょうか?
おわりに
以上、『プレイグテイルイノセンス』のクリア後レビューでした。
昨今では中々珍しいステルス偏重のゲームです。
ps storeのセールで2000円ちょいで買いましたが、値段相応には楽しめました。
ただ個人的には可もなく不可もなくといった感じで、世間で言われているような高評価っぷりを体感できませんでしたね。
ちょっと期待値が高かったのかもしれません。
また、クリア時間は12、3時間と短めでしたが、ゲーム自体に自由度や発展性があるわけではなく、これ以上ボリュームがあるとかなりダレると思うので丁度よかったのかなと。
けれどもダークファンタジー全開の雰囲気は好きなので、もし続編があれば期待したいです。
あ、でも次はもっとAIを賢くしていただけるとありがたいかな・・・。