はじめに
ここでは、「√Letter-ルートレター」をクリアした感想をつらつら書いていきます。
※クリア後の観点から書いているのでネタバレ注意です
本作は、島根県松江市を舞台にしたアドベンチャーゲームで、15年前に不可解な手紙を送ってきた文通相手を探す「青春サスペンス(by公式)」となっています。
ゲーム概要
ストーリー
2014年、東京。
仕事を辞め、実家に帰省していた貴之は、自室で未開封の手紙を見つける。
それは15年前の高校3年の時、島根県の松江市に住むという同い年の女子高生・文野亜弥と文通していた時に受け取ったものだった。
中を見てみると、
私は人を殺してしまいました
罪を償わなければなりません
という穏やかではない内容が書かれていた。
なぜ亜弥がそのようなことを書いたのか気になった貴之は、彼女に会うため松江に向かう。
しかし、彼女の家を訪ねてみるとそこは空き地になっていた。
近隣の住人に話を聞くと、彼女はなんと25年前に亡くなっており、さらに15年前に起こった火事が原因で彼女の家が全焼していたことが判明し・・・。
本作の特徴
松江が舞台のアドベンチャー
冒頭でも述べたように、本作は島根県松江市を舞台にしたアドベンチャーゲームとなっている。
地図上で示された地点を選択することでその場所に行くことができ、各地を回りながら昔の文通相手である文野亜弥の行方を探していく。
行った場所ではポイント&クリックの要領で探索をし、目ぼしいところを選択してストーリーを進めたり、特定のキーアイテムの入手が可能。
また、探索できる所は架空のものもあるが半分近くは実在し、特に本作で登場する観光名所は全て現実にも存在する。
有名どころの観光名所はしっかりと網羅されているので、各地を回ればちょっとした観光気分に浸れるだろう。
過去の文通がEDを変化させる
ストーリーは全10章で構成されており、章の初めには文通相手からの手紙を読み、過去にどんなやり取りをしたのか振り返るパートがある。
この時、彼女の手紙に対し自分がどのように返信したかということも振り返ることになり、そこでどのような返信をしたかによってストーリーが分岐する。
例えば上記スクショだと、P.S.で「休みは何をしていますか?」と質問されるが、
そこで選択肢が3~5つ表示され、過去にどのような返答をしたかでその後の展開・結末が変化。
このようにして複数のエンディングを回収し、真相を明らかにしていく。
追求パートとマックスモード
各章の終わりには、文野亜弥のクラスメイトと直接対峙するという追求パートがある。
追求パートでは集めた証拠や明らかになった事実を武器にクラスメイトに迫り、彼女に関する情報を引き出すことになる。
↓
このようにして相手を突き崩していく。
なお、間違った選択や状況にそぐわない証拠を提示するとミス扱いとなり、合計6回ミスすると最初からやり直しとなる。
※ゲームオーバーはない
また、重要な局面ではマックスモードというミニゲームのようなモードが挿入され、次々に表示される台詞の中から適切な選択肢をタイミング良く選び、相手を説得したり動揺させたりすることで会話の主導権を握る。
追求パートとは違い、マックスモードは失敗してもミスとはならず、何度でもやり直しが可能。
感想
良かった点
テンポよく進むストーリー
内容はともかくストーリーは大きな中だるみもなく、テンポ良く進んでいきます。
なので、単純にクリアだけを目指すならあまり苦にはならないです。
ただ、テンポの良さと引き換えに、キャラの内面や掘り下げが必要最低限しか書かれていないため、どのキャラにも感情移入しづらいことになっています。
また、ルートによっては伏線もなくかなり雑な感じで急展開を迎えるので、理解がついていかないこともそう珍しくないです。
なので、あまり整合性とか起承転結を求めないことが重要になってきます。
なんなら何が起きても笑い飛ばすぐらいの余裕があるとベストですね。
・・・よかった点と言いつつなんか悪い点も挙げちゃってますがご容赦ください。
このゲームそれぐらいいいところが少ないんです。
松江の名所がよく分かる
数少ない垣根なしによかった点。
本作は島根県による全面バックアップにより、観光協会や多数の実在する店と協力・協賛によって生み出されているため、情景描写にかなり力が入っています。
ゲームの中では松江の観光名所を巡ることになりますが、どこも景観イラストが非常に綺麗で趣があり、かつ観光ガイドでしっかり説明も見られるので、とにかく観光意欲をそそられること間違いなしです。
と同時に、名産品や名物料理も取り上げられており、松江の魅力を知れるという点では完璧に近いかと。
特に料理は本当においしそうで素晴らしいイラストです。
トロコンがしやすい
ここもいい点だと思います。
本作は12時間程度でトロコン可能です。
一部作業もありますが、運要素はなく膨大な苦行を強いられることもないので 、トロコン自体はかなり楽な部類なんじゃないかと。
悪かった点
登場人物の魅力のなさ
率直に言うと、本作に出てくるキャラの大半は魅力がありません。
特にメインキャラである主人公や文野亜弥のクラスメイト達は揃いも揃って性格が悪く(挙げたらキリがないんですが例としては平然と「死ね」「殺すぞ」を言い放つ高校教師や、助けても例の一つも言わないキャラなど)、好感が持てる要素がほぼないです。
類は友を呼ぶってこういうことを言うんだなっていう感じ。
また、クラスメイトによっては性格が悪いどころか普通に犯罪を犯しているキャラもおり、
・過去に性的暴行未遂をしており、それの発覚を恐れて過去を嗅ぎ回る主人公を外で堂々と殺そうとする
→本末転倒では・・・
・職場の金を300万横領しており、クラスメイト達にカンパしてもらう(職業:市役所職員)
→持つべきものは友やね(にっこり)
など、笑えないやらかしをしてたりします。
なお、どちらも全くお咎めなしです。
どう考えても両方100%アウトだと思うんですが・・・。
メインキャラは程度の差こそあれこんな感じなので、出てくるキャラでまともなのは、主人公が滞在する旅館の女将さんと中居の智子ちゃんぐらいです。
特に智子ちゃんはかわいい顔して主人公の痛いところを的確に突くことがあるので、プレイヤーの溜飲を下げる役割もあります。
この子がいなかったらこのゲームもっと破綻してたかもしれません。
主人公の人間性
クラスメイトもやばい人間は多いですが、一番やばいのは何と言っても主人公です。
ということで、主人公の悪い意味でやばい人間性についてかいつまんで説明します。
まず主人公の基本設定は、
・東京在住の33歳男性
・11年勤めた設計事務所を退職し独立の準備をしている
・何事も全力で取り組む姿勢から仲間内では「マックス」と呼ばれている
という感じで、これ自体は特に何の変哲もないプロフィールですが、作中の描写を見る限り性格はかなり難あり(オブラートに包んだ表現)で、
・言葉足らずで他人の心が理解できない
ex)初対面の女性に「(高校時代)あんたビッチ(ってあだ名だった)だろ。(昔文通していた時にもらった)手紙にそう書いてあったぞ」と言って怒らせる
※当の本人はなぜ怒らせたのか皆目見当がついていない
・性根が悪い
ex)通行人に聞き込み中、相手から有益な情報が得られないと心の中で「(この人は役に立たないな)」とか「(これ以上のやり取りは時間の無駄だな)」と毒づく
・「嘘も方便だから」という理由で平気で嘘をつく
→特に身分を偽って関係者に接触するパターンが多い
・礼節や相手への敬意に欠けているところがあり、基本馴れ馴れしい
→初対面の相手でも年上・年下問わずすぐタメ口になりがち(特に目下の人間には高圧的に接する)
・自分のことを棚に上げて相手を非難する傾向がある
→終盤は特に顕著
・情報を引き出すためなら罵倒や脅迫も厭わない
→詳細は後述
というように、パッと思いつくだけでもこれぐらい悪い点が見受けられます。
現実にこんな人間がいたらとにかく近づきたくないとしか思いません。
よくこんなのを主人公にしたな。
という感じなので、本作をやったことがある方なら口を揃えて主人公のことをクズと言うでしょう。
というか作中のキャラの大半(特に亜弥のクラスメイトら)から
「不愉快」
「クズ」
「最低」
「サイコパス」
「二度と顔も見たくない」
と言われる始末。
他のキャラにそう言わせているあたり、シナリオライターも主人公をそういう人物だとして描いていると思いますが、ちょっと奇をてらい過ぎかと。
少なくとも、自分は微塵も好感を持てませんでしたし、感情移入など以ての外でした。
でも主人公って実は名前変更が可能で、その気になれば自分の名前にしたりできるんですよね。
それってつまり、主人公を自分の分身として操作することもできるってわけで・・・。
ライターは一体何を考えてたんでしょうか。
追求とは(哲学)
ゲーム的には盛り上がりどころである追求パートですが、この追求パートも主人公の人間性が如実に反映されています。
というのも、追求とは聞こえがいいですが、やってることは追求というよりも以下のように言葉の暴力以外の何物でもありません。
・相手の弱みを徹底的に叩いてボロを出させる
ex)お前それヅラだろ!隠してるつもりだろうが同僚はみんな知ってるぞ!
・罵倒
ex)そんなんだからお前はダメダメなんだよこの愚鈍!(初対面の相手に対して)
・脅迫
ex)お前昔売れない芸能人だったんだろ!こっちは証拠持ってんだよ!バラされたくなかったら知ってること話せ!
主人公は基本的にこれら3つのやり口を織り交ぜつつ、相手を自分のペースに乗せていきます。
・・・まぁ実際操作するのはプレイヤー自身なんですが。
こっちまで性格悪くなりそう。
という有様なので、一見間違いに思えるような選択肢が正解ということも珍しくありません。
ひどい場合は、どれもこれも罵倒ばかりで逆にどれが正解か迷うことも。
いやほんと追求ってなんだよ。
おわりに
PS Nowで配信されてて興味本位でやってみましたが、想像以上にやばいゲームでした。
本作の悪評はある程度知ってましたが、それを踏まえてもなおインパクトがありましたね。
クズの見本市を見た気分です。
島根県、特に松江の方達はこれを見てどう思うんでしょうか。まぁ見る機会は普通ないと思いますが
ただ、タイアップには力が入っており、島根県側のバックアップもあって風景描写は非常に丁寧なのでそこだけはよかったかなと。
あとこのゲーム、後日談&実写が追加された完全版があるらしいですが、流石にそっちは触りません。
これだけでもうお腹いっぱいなので・・・。