はじめに
ここでは、『スカーレットネクサス』をクリアした感想をつらつら書いていきます。
※クリア後の観点から書いているのでネタバレ注意です
本作はバンダイナムコから発売されたアクションゲームで、超「脳」力という異能の力を持った主人公達の戦いを描いた作品となっています。
サイバーパンクならぬ「ブレインパンク」という脳にフォーカスしたストーリーとゲーム性が特徴で、コテコテのJRPGの中に奇抜な設定や世界観が広がっているのが魅力。
ということで、まずは概要から。
ゲーム概要
ストーリー
新歴2020年ニューヒムカ。
この世界に生きる人々は、生まれながらにして「脳力」という超感覚を有しており、この脳力を基に最適化された社会を築いていた。
だが一方で、世界には遥か昔から「怪異」と呼ばれる謎の怪物も跋扈しており、人々は日夜怪異に怯えながらの日々を送っていた。
この怪異に対抗すべく、人類は極めて高い脳力を持つ人間である「超脳力者」を集め、「怪異討伐軍(通称怪伐軍)」を結成。
怪異と戦いながらも今日まで種として存続してきた。
そして現在。
怪伐軍の訓練課程を修了し、晴れて新兵として怪伐軍入りしたユイト・スメラギとカサネ・ランドールは、最前線で怪異との戦いに身を投じていく。
だが二人はまだ知らない。
この世界の真実。そして自らに眠る秘密を。
本作の特徴
独自の世界観と設定
本作は、「ブレインパンクアクション」と銘打たれている作品であり、脳にちなんだ設定が多い。
人体改造こそないものの、作中を覆う雰囲気はどことなくサイバーパンクを彷彿とさせる。
脳力
世界観のベースと言っても差し支えない設定。
脳力とは、人間の99.9%が生まれながらにして持っている力のことで、「思考や意識を外界に作用させる力」を指す。
作中ではこの脳力を利用したシステムが随所に見られる。
例えば、携帯端末やPCなどのネットワーク機器の役割は全て脳が担っており、脳内から外部のネットワークに繋がったり、他者と連絡をとったりすることが当然のものとなっている。
そのため、そういったデバイスは作中ではほとんど出てこない。
また、市街地の電工掲示やロードコーンなどの類は全て一種のAR(拡張現実)を利用しており、実際にそこにはなくとも、脳力のおかげでそれらがビジョンとして可視化されている。
他にも不適切なものを見せないように視覚検閲がされたり、脳に危険が及ぶ時は警告が表示されるなど、脳というものそれ自体が日常生活において重要な役割を担う。
その反面、ごく一部の人間は生まれつき脳力を持っていない者もおり、そういった人間は「無脳力者」と呼ばれる。
社会的マイノリティである無脳力者に対する差別は存在しており、作中では無脳力者に対応する表現として「ベルペッパー」という差別用語が登場する。
ベルペッパー
無脳力者を意味するスラング。ベルペッパーとはピーマンのことだが、「ピーマンのように中身がない=脳力を持たない」という由来からそう呼ばれている。差別的な表現ではあるが、自らを無脳力者だと認めることに心理的な抵抗がある無脳力者が、自発的にベルペッパーを用いることも多い。
超脳力/超脳力者
通常よりも一際高い脳力のことを「超脳力」という。
本来、脳力自体には特殊な能力はないが、超脳力になると念力や透視、発火や瞬間移動など、異能とも呼べる特殊な力が発現する。
こういった力を持つ人間は「超脳力者」と呼ばれる。
超脳力は若い人間ほど力が強く、肉体が成長するにしたがって減衰していく。
作品の舞台となるニューヒムカでは、年に一度脳力を測定することが義務づけられており、ここで超脳力者と認定された者は怪伐軍にスカウトされる。
なお、スカウトされた者には一切の拒否権が認められておらず、入隊可能年齢である16歳を迎えると強制的に怪伐軍に入隊しなければならない。
怪伐軍
怪異と戦うため、超脳力者のみで構成された軍隊。
正式名称は怪異討伐軍。一般市民からは「緋色の守護者」という中二の愛称で呼ばれている。
スカウトされた超脳力者が16歳になると入隊する。
スカウトされなかった場合でも、自ら志願し一定以上の脳力があると認められれば入隊を許可される。
※いずれの場合で入隊しても、まずは訓練学校に入りそこで訓練課程を履修する
また、超脳力は年をとればとるほど衰えていくという性質上、怪伐軍兵士は「矮化剤」という肉体の成長を抑制する薬品の摂取が義務づけられている。
これにより、外見と実年齢に差が出ている兵士も多数おり、見た目は少年のようでも実年齢は30過ぎだったり、10代後半に見えても40歳過ぎだったりと、見た目とのギャップが激しい兵士は珍しくない。
しかし、矮化剤の効き目には個人差があり、最終的に効果がなくなった場合は退役となる。
怪異
本作における敵。
人間(もしくは動物)の脳を主食としており、その本能に従い襲ってくる危険生物。
およそ生物らしくないサイケデリックな外見が特徴。
理性や知能はなく、種類によっては同族に対して攻撃することも。
「断絶の帯」と呼ばれる成層圏に滞留している靄のようなものから発生し、そこから地上に降下していると考えられている。
怪異は通常兵器では倒せず、超脳力でしか倒すことができない。
二人の視点で進めていくストーリー
本作では、ゲーム開始時にユイトとカサネのどちらを操作するかを決定し、そのキャラの視点からストーリーを進めていく。
物語の大筋は両者とも同じではあるが、選んだキャラによって仲間になるメンバーが変わったり、所属する勢力や戦う敵が違っていたりと細部の展開は異なる。
そのため、ユイトのストーリーでは分からなかったことが、カサネのストーリーで分かるようになっており(その逆も然り)、二人分のストーリーをクリアすることで物語の全貌が明らかになる作りになっている。
それぞれの物語のテイストは以下の通り。
ユイト編
謎を追いながら進んでいく王道寄りのストーリー
仲間になるキャラは、ハナビ、ゲンマ、ツグミ、ルカ。
カサネ編
最初からある程度謎が分かった上で進んでいく裏側的なストーリー
仲間になるキャラは、シデン、アラシ、カゲロウ、キョウカ。
ユイト・スメラギ
主人公の一人。
ニューヒムカを建国したヤクモ・スメラギを祖先に持ち、代々政治家を輩出してきた由緒正しき家に生まれた青年。
だが、本人は家の反対を押し切り、親友のナギ・カーマンと共に怪伐軍に志願兵として入隊する。
子供の頃にある怪伐軍の女性に助けられたことがきっかけで軍に入隊したのだが、当時の記憶は混濁しており、その女性のことを詳しく思い出せないでいる。
有する超脳力は念力。
カサネ・ランドール
主人公の一人。
ランドール家という名家の養女であり、怪伐軍訓練学校を主席で卒業したエリート。
良くも悪くも歯に衣着せぬ言動や、合理主義かつクールな性格から周囲と軋轢を生むことも少なくない。
時折、「レッドストリングスから目を離さないで」と口にする女性の夢を見ることがあり、夢は夢と割り切りつつもどこか戸惑いを隠せない部分も見せる。
有する超脳力はユイトと同じく念力。
超脳力を駆使したアクション
戦闘では、ユイト/カサネのいずれかを操作して戦う。
仲間は最大2名までNPCとして同行させることができる。
両名の超脳力は念力であり、ユイトは刀/カサネは小型刃で近接攻撃しつつ、車やガレキなどフィールドにある物体を操り敵にぶつけて攻撃する、というのが基本スタイル。
近~中距離が間合いとなる。
念力で動かせるものにはレパートリーがあり、上述の車やガレキを始め、水or油が入ったドラム缶、ブルドーザーなどの重機、バスも動かすことが可能。
ステージ内にあるオブジェクトは基本的に動かせるものと思っていいだろう。
ただし、念力は常時使い放題というわけではなく、念力ゲージという専用ゲージが存在し、念力を使う度にこのゲージを消費していく。
念力ゲージは近接攻撃(刀/小型刃)を当てることで回復する仕様となっており、近接と念力を織り交ぜながら戦うことが前提となっている。
味方の超脳力を使えるSAS
戦闘における醍醐味の一つ。
設定上、怪伐軍ではSASと呼ばれる軍独自のアプリケーションが採用されている。
これは簡単に言えば、「味方の超脳力の使用を可能にするシステム」のこと。
SASで繋がった者同士は互いの超脳力を貸し借りできるようになり、戦闘の幅が広がる。
実際の戦闘においてもこの設定が生かされており、操作キャラであるユイト/カサネは、SASによって複数の超脳力の使用が可能。
使える超脳力の一例としては、発火、電撃、複製、超高速など。
SASで発火を使えば爆炎を生み出せたり、超高速を使えば周りがスローモーションになり自分だけ一方的に攻撃したりできる。
脳駆動
一種の時限強化。
脳駆動と書いて「ドライヴ」と読む。
脳駆動はHP横にある専用ゲージがマックスになると自動で発動。
※ゲージは敵を倒したり被弾する度に増加
発動中は攻撃力・攻撃速度アップや機動力アップなど、様々な強化効果を得られる。
任意のタイミングで発動できないのはネックだが、リスクなしに全ての性能がパワーアップするため、使い勝手は良好。
脳内空間
最大の切り札。
脳内空間と書いて「ブレインフィールド」と読む。
脳力を最大限まで高めることで発動し(脳駆動と違いこちらは任意で発動可能)、発動者にとって最適化された空間を展開。
発動中はSASによる超脳力は使えなくなるが、その代わりに攻撃性能や耐久性能が著しく強化される。
また、脳内空間ではゲージの消費なしで念力が無制限に使えるようになり、オブジェクトも無限に出現する。
だが、発動時間は脳駆動よりも短く、自力で解除しなければ脳が負荷に耐えられずゲームオーバーになってしまうというデメリットも存在する。
なお、ユイト/カサネだけでなく、敵が脳内空間を使ってくる場合もある。
仲間と親交を深める絆エピソード
仲間になるキャラにはそれぞれ「絆エピソード」という固有のエピソードがあり、ユイト編とカサネ編でそれぞれ違うエピソードが楽しめる。
ユイト視点から見た場合と、カサネ視点から見た場合ではいい意味で印象が異なるキャラも多く、キャラ一人一人が丹念に掘り下げられており、見応えは十分。
また、アイテムをプレゼントして好感度を上げる要素も存在する。
感想
良かった点
世界観や設定の面白さ
全体的に中二感漂う世界観や設定が特徴の本作ですが、これがなかなか面白いです。
超脳力という外連味溢れる設定や、超脳力を維持するために身体の成長を妨げる矮化剤、脳力を持っていることが「普通」であり、脳力を持たない「普通じゃない」人間が差別される社会など、ありそうでなかった世界観を作り出すことに成功しており、作品の魅力として成立しています。
特に人間に対して矮化剤を使うという発想は面白かったですね。
※現実での矮化剤は主に植物の成長を抑制するために使われる
倫理観が現実とは全く異なっていて、それが平然と受け入れられているというのがいかにも非現実のフィクションって感じで個人的には好みでした。
サイバーパンクのような人体改造なしに、倒錯的でサイバネティックスな雰囲気が出ていたように思います。
「大抵のことは全て脳で完結するからPCや携帯端末を使うのは逆に非効率」というのもグッド。
あと矮化剤という設定は、JRPGでよくある「なんで大人じゃなくて子供が戦うの問題」に地味に上手いこと答えを出しています。
Q.なんで子供が戦ってるの?
A.見た目は子供でも実年齢は立派な大人です
という具合に。
それと戦闘で仲間から超脳力を借りる際、SAS接続によって仲間と繋がる必要があるんですが、設定だとこの接続ってかなり痛いらしいんですよね。
で、そういう設定を反映してか、戦闘でSAS接続する際は毎回必ず痛がるので、細かい描写もしっかりしてるなぁと感心しました。
走っている時に接続すると痛いらしく少しよろけます。
二人の視点で掘り下げられるキャラクター達
本作はユイトとカサネのダブル主人公かつ、大筋は同じながらもそれぞれに固有の展開が待っているというストーリーですが、二人の視点から仲間になるキャラ達が丁寧に掘り下げられます。
ユイト編とカサネ編では見え方が違ってくるキャラも多く、最終的には全員に好感が持てるようになっており、ここは素直にいい部分だと思いました。
特にシデンに対する印象の変化は顕著。
ユイト視点では「嫌味な奴だけど根は悪くない」という程度の印象ですが、カサネ視点ではギャグ常識人ポジションかつ「カサネの成長を促す促進剤」みたいな役割を担っており、カサネ編での掘り下げが著しいです。
特にカサネはユイトと違って、良くも悪くも周りを顧みないところや勝手に行動方針を決めてしまう所があり、そういった直すべき部分をシデンが(言葉足らずながらも)指摘するため、シデンに対して中々の好印象を抱きます。
序盤~中盤に差し掛かるまではカサネよりも感情移入できるレベル。
ストーリーは二人の視点を見て全貌が明らかになりますが、こういった仲間の人となりも二人の視点から見て初めて理解できることは多いです。
なので、片方のストーリーをクリアしただけで終わっている場合は、是非もう片方のストーリーもやってみて欲しいですね。
それとユイト編とカサネ編どちらを先にプレイすべきかについてですが、自分はユイトが先かなと思いました。
カサネ編は答え合わせの側面が強く感じられたので。
忙し過ぎずモッサリし過ぎずなアクション
アクション面の手触りはなかなか良好です。
新規IPとしてはしっかり頑張っていると思います。
戦闘ではSASを使うためにボタン同時押し(R1+〇×□△のいずれか)がコンスタントに求められるので、慣れないうちは戸惑うものの、慣れてくると一方的に倒すことができ、結構な爽快感がありました。
バトルスピード自体も速い部類ではありますが、モーションがいい具合にモッサリしているため、目で追えないほどの速さはありません。
個人的にはちょうどいい塩梅だったと思います。
コンボも複雑ではなく、アドリブが効くのもよかったなと。
あとSASを使用した時のカットインがかっこいいです。
久々に中二心をくすぐられました。
テイルズもそうですが、バンナムはこういうテンポよくかっこいい演出を作るのが本当に上手ですね。
一歩間違えればテンポ悪くて痛いだけのものになってしまうのに、上手くバランスをとってて素晴らしい。
悪かった点
ストーリーに関して
ストーリーはユイト編とカサネ編の二つに分かれていますが、どちらを選んでも後半以降はお互い合流した上で物語が進んでいくので、中盤ぐらいまでしか固有の展開がありません。
なので2周目の後半は結構しんどかったですね。ほとんど同じ展開を見ることになるので。
あと全体として、風呂敷を広げるのはいいものの、結局畳み切れず一つ一つの問題が中途半端になっているように思いました。
スオウとセイランの争いやら両者のドス黒い暗部やらトゲツの野望やら色々出てきますが、ちゃんと解決できたのは最初からずっと問題視されていたクナドゲート周りだけという。
まぁトゲツに関しても一応解決扱いだと思われますが、正直「え?これで解決?」って感じですね。むしろこれからがきついだろうに。
というように、広げるだけ広げて畳み切れなかったストーリーによくある問題は山積みだけどこれから頑張ろうエンドなので、人によっては消化不良感があるかもしれません。
紙芝居形式&バックログなし
ストーリーはムービーを交えつつも基本的には紙芝居スタイルです。
人によって間違いなく好みが分かれる部分だと思います。
自分はノベルゲーやテキストアドベンチャーなんかをよくプレイするので、この方式自体には別に抵抗はありませんでしたが、違和感はありましたね。
メインがアクションなのにストーリーは紙芝居という、静と動のメリハリどころか落差があり過ぎてちぐはぐしていたなと。
紙芝居部分もノベルゲームをやってるのかと錯覚するレベルで長かったですし。
ただ紙芝居と同じくらい気になったのは、バックログがなかったこと。
テキスト量が膨大かつ紙芝居方式なのに、ログが見れないのは個人的にはマイナスポイントでした。
自分はある程度会話を聞いた上でログを辿って伏線っぽい台詞を見つける作業が好きなので、バックログはあってほしかったですね。
一部設定が練り込み不足
設定は面白いものが多い本作ですが、その設定の一つ一つは十分に練り込まれているわけではありません。
というか首を傾げるものもチラホラあります。
尺の都合もあったというのは重々承知していますが、それにしたってもったいないという箇所が多かったのは否めませんでした。
ということで気になったものをいくつか。
七剣星
まずは中二感が半端じゃない「七剣星」について。
これは怪伐軍の中でも一際優れた7人の精鋭をまとめてそう呼んでいるとのことですが、そもそも作中だとセプテントリオンは5人しか出てきません。
これに関しては「セプテントリオンは存在が秘匿されている者もいる」ということで、全員が明らかにされているわけではないという理由が語られますが、明らかにされていない連中を頭数に入れることのメリットって何なんですかね?
残りのメンバーは続編で!ということなんでしょうか。それとも単にネタ切れだったのか。
というか明らかになってるメンバーの多くも、イマイチ強さが伝わってこない。
敵として出てくるセプテントリオンは順当に強く、確かに精鋭なだけあるというのは伝わってくるものの、残りについては正直一般兵と違いが分かりません。
セプテントリオンに選ばれる基準は何なのか不明ですが、もっと分かりやすく強さを感じさせる描写が欲しかったですね。
「主人公達が必死で倒した敵を瞬殺する」みたいな。
カラス
マスコミの別名。
作中世界におけるマスコミは、こちらの戦いをドローン越しに実況しており、作中ではこういったマスコミのことを「カラス」と呼称しています。
が、このカラス。出てくるのは序盤だけでそれ以降は一切出てきません。
プレイ中はカラスの存在が話を引っ搔き回すのかとちょっと期待してたんですが、そんなことは全くなく、なぜ出したのかよく分かりませんでした。
まぁ作中世界では怪伐軍や七剣星が一般市民に認知されていて、一部には固定のファンが付いていたりするので、「軍の戦いがエンタメとして成り立っている側面もある」ということをカラスを出すことで分かりやすく説明した、と言えなくもないです。
それがストーリーの面白さに繋がっているかと言われれば、大いに疑問ではありますが。
というか血なまぐさい戦いをお茶の間に届けてるのかこの世界は・・・。
スカウトに関して
「高い脳力を持つ人間はスカウトによって強制的に徴兵される」というブラック企業も真っ青な世界観の本作ですが、これについても掘り下げが足りてなかったです。
まず圧倒的に兵士側の声が聞こえてこない。
スカウトされた時点で兵士として生きる他なく、矮化剤によって普通の人生を送れないことが確定しているのに、それに対する不満や疑問を呈する声が一切聞こえてきません。
軍自体は市民から英雄視されているとは言え、この制度ってかなり異常だと思うんですが・・・。自分の将来が潰されるも同然なのに。
そういったリスクが帳消しになるほどのリターンがある可能性はありますが、給与面にやや思うところがある兵士なんかもいるので、実際のところ兵士がどんな思いを持っているのかは不明。
まぁ物語に登場するスカウト組の新人がほとんどいないという事情を考慮する必要はあります。
ならスカウト自体が名誉なこととして認識されているのかと思いきやそんな描写もなく、一般人の中にはスカウトの在り方に疑問を持っている人もいたりして、実情がイマイチピンとこなかったです。
政府と密接な関わりを持つ大企業の子息や息女すら拒否できないほど極めて強権的な制度なのに、作中ではほとんど触れられることがなかったのは正直疑問でしたね。
この辺をもっとつついていたら世界観の深堀りができていたと思います。
まぁ体制に疑問を持つと人格を矯正される世界だから仕方ないのかもしれませんが・・・
敵対中でも進行する絆エピソード
ユイトとカサネは立場や事情の違いからお互い対立することになるんですが、この時対立しているキャラとの絆エピソードが普通に発生します。
「俺ら今敵同士だけど一旦そのことは忘れてちょっとお茶でもしようぜ」的な誘いが平然と来る。
これに違和感を覚えなかった人はおそらくいないんじゃないでしょうか。
いや単なる対立ならまだしも、お互い所属勢力が違うし、それ以前に規律遵守を強く求められる軍人なわけだし、ホイホイ敵と会うのはダメでしょ流石に・・・。
味方に見られたらどうすんだ。
これに関しては、「目当てのキャラが途中まで一向に出てこない」という不満を解消するための施策だと思われますが、ゲーム的な都合よりも物語の整合性を重視して欲しかったですね個人的には。
怪異の扱い
人類の天敵として登場する怪異ですが、ゲームにおける存在感は正直そんなにありません。
怪異研究やらなんやらが進行しているのは全編を通して語られるものの、人と人との争いにフォーカスされるストーリーのため、どうしても隅に追いやられています。
ネタバレが多分に含まれるので表現が難しいんですが、なんというか怪異をたたき台にしてあくどいことをしている奴らの方が目立っていたなぁという印象。
方向性としては、アラガミと戦いつつも結局人間が一番やばいことしてるゴッドイーターとちょっと似ていると思います。
あっちも同じバンナムのゲームですし。
戦闘面での不満
戦闘自体は面白く仕上がっており、新規IPとしては頑張っている方ではありますが、少々気になる点もいくつか見受けられました。
ここでは特に気になったものを取り上げたいと思います。
麻痺が強すぎ&カサネ側が強すぎる
本作ではデバフが何種類かあり、そのうちプレイヤー側が敵に付与できるのは「放電による麻痺」と「火炎による炎上」なんですが、麻痺は一定時間敵を行動不能にできるという効果でかなり強いです。
その上どうやらデバフの累積耐性はないようで、複製や超高速と組み合わせて手数で攻めれば2回目以降の麻痺もすんなり通ります。
なんというか個人的には大分麻痺ゲーだったなと。縛ればよくね?と言われればその通りですが
というか「放電+複製+超高速」があれば、大抵の敵は封殺可能です。
しかもこれ全部カサネ側の仲間の超脳力なので、カサネ隊が滅茶苦茶優秀なんですよね。
カゲロウの透明化も攻めにも守りにも使えますし。
そういう意味では、1周目でカサネ編をクリアしてしまうと、2周目のユイト編が合流するまで大分しんどいんじゃないかと思いました。
なので1周目はやっぱりユイトからがおすすめかな。
敵の火力が高い
全体的に敵の火力は高めです。
難易度ノーマルでも油断大敵。
特にボスなんかはこっちがHPや防御をしっかり上げていても、一撃で3~4割ぐらいは平気で削ってきます。
気づいたら自分が死にそうになってたとか、既に仲間が死んでたなんてこともそんなに珍しくありません。
やるかやられるかの大味スリリングな感じになってるなという印象。
それなら当たらなければどうということはないスタイルで華麗に戦いたいところですが、後述の回避面の悪さもあって、スタイリッシュに戦うのは結構難しいです。
回避性能が悪い
回避性能はこの手のアクションゲームにしてかなり低めで、満足に頼れるものではありません。
悪い意味でシビアです。
多分これ無敵時間ほとんどないんじゃないですかね。
他のゲームなら間違いなく回避が成立しているだろう場面でも普通に被弾しますし。
人によってはストレスを感じる部分だと思います。
なおかつ攻撃を回避でキャンセルできないのもネック。
敵の攻撃が来ると思ったら手を止めて大人しく引き下がるか、ダウンor麻痺狙いでゴリ押すしかありません。この辺はだいぶ大味な調整。
また、ジャスト回避するとダメージ無効で反撃可能という一般的なシステムもありますが、このジャスト回避もかなりシビアです。
ツグミの超脳力がないと満足にできません。
というかツグミの超脳力を生かすために敢えてシビアにしたというのが正解だと思います。
まぁこのゲーム、ジャスト回避に限らず超高速やら透明化やら硬質化やら被弾を誤魔化す手段が豊富ですしね。
回避性能の悪さにも多少目を瞑らないといけないのかもしれません。
おわりに
以上、『スカーレットネクサス』のクリア後レビューでした。
新規IPとしては光るものを感じましたが、それ以上に気になる点も目立った作品だと思います。
正直気になる部分はまだまだあるんですが(報酬がまずくやる気を失わせるクエスト群、仲間キャラ以外の描写の薄さ、回収されない伏線が豊富など)、ただでさえ長くなったので泣く泣くカットしました。
なんというか、個人的には「素材はいいのに詰めが甘い」というのが率直な感想です。
強気な値段設定も含め、良くも悪くもバンナムゲーらしさ全開だったなと。
ただ、世界観や設定は面白いと思うので、次回作があるならもっと一つ一つの設定を深堀りして作品を膨らませていってほしいですね。