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『返校』クリア後感想 台湾発のホラーゲーム/ストーリーと演出がかなりハイレベルな一作

画像出典:My Nintendo Store

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はじめに

ここでは、『返校』をクリアした感想をつらつら書いていきます。

本作は、2017年に赤燭遊戲という台湾のゲームメーカーが開発したゲームで、1960年代の台湾を舞台にしたホラーアドベンチャーです。

ストーリーはフィクションですが、当時の台湾情勢(戒厳令が敷かれていた時代)を基にした内容であり、60年代の台湾の雰囲気を学校という舞台を通して感じ取れます。

ある意味歴史ものの側面を持ったゲームです。

という風に書くととっつきにくいと感じられるかもしれませんが、話自体は小難しい内容ではなく、予備知識がなくても問題なく楽しめるので、その点は心配ありません。

メインとなるのはあくまで人間ドラマです。

そんな感じの内容なので、ちょっとでも興味が沸いたら気軽にプレイしてもいいのかなと。まぁストーリーは暗いですが…。

ということで、以下本題。

ゲーム概要

ストーリー

1960年代台湾のとある高校。

2年の男子生徒ウェイは、授業中に居眠りをしてしまっていたらしく、誰もいない教室で目を覚ます。

教室の黒板には「台風警報」とだけ書かれており、周囲には誰もいないことからみんな自分を残して下校したと思い、ウェイも帰ることに。

途中、近道しようと体育館を通ろうとしたところ、体育館のステージ上で眠っている女子生徒を発見する。

その生徒の名前はレイ。

彼女が言うには、自分でも知らないうちにここで眠ってしまっていたらしい。

そうこうしているうちに台風が強まったことから、二人は下校は難しいと判断。

一旦教室に避難することにする。

ウェイは外部の人と連絡を取ってみると言い、電話がある教官室へ。

レイは教室で待っていたが、いつまで経ってもウェイが戻ってこないのを心配し、彼を探し始める。

が、突如として目の前が暗転。

目が覚めると、いつの間にかまた体育館で眠ってしまっていたことに気づく。

状況に戸惑うレイ。

そして彼女の目の前には、逆さまに吊るされ死亡しているウェイの姿があり・・・。

本作の特徴

60年代の台湾が舞台のホラー

本作の舞台は、1960年代台湾のとある高校。

当時の台湾は戒厳令下のもと統制が強く、反体制的な思想や言論は弾圧され、国民が国民を密告することによって投獄されるケースも珍しくなかった。

この時代のことを「白色テロ」といい、本作ではこの白色テロの時代を色濃く描いたストーリーが展開される。

そのため、ホラーというジャンルを加味しても、ゲーム全体を取り巻く雰囲気は重く息苦しい

が、当時の台湾の歴史的背景を把握していなくても、ストーリーでは専門用語や小難しい設定は一切出てくることはなく、プレイする上で必要な予備知識は一切ない

把握できていれば、序盤の没入しやすさが少し変わる程度のもの。

そういう意味ではハードルは決して高くないので、興味があれば是非プレイしていただきたい。

亡霊からの逃走

ゲーム前半には、敵となる亡霊が登場する。

この亡霊はこちらの存在に気がつくと攻撃してくるが、息を潜めることでやり過ごすことが可能。

万が一気づかれても、一定の距離を取るか、初期のバイオハザードのように追われている最中に別の部屋に入ることで撒くことができる。

そのため、難易度自体はそこまで難しくない

また、章が変わると息を止めても目を合わせただけで即死攻撃をしてくる敵が登場する。

この敵に対しては、息を止めると同時に顔を背けることでやり過ごせる。

感想

良かった点

アジアンテイストなホラー

上述の通り、本作は台湾が舞台のゲームです。

台湾どころか日本から一度も出たことのないザ・日本人の自分からしてみれば、文字通りザ・海外のゲームではあるんですが、テイストとしては思いの外すんなり合いました。

というのも、登場人物が同じアジアの人達だったり、舞台が日本と似通った部分が多い学校だったり、アイテムに書かれている文字や掲示板の表示が漢字(ちゃんとは読めないけど意外と意味が分かる)だったりと、なんとなく親しみが湧くんですよね。

ちゃんとした意味は分からずとも、結社の自由を禁じている標識なのは分かる

海外ではあるけど、全くの他所の出来事とも思えない不思議な親近感とでも言いましょうか。

ボキャ貧で恐縮ですが、そういった部分が見受けられるおかげで、すっとゲームの世界に入っていけました。

また、ホラー描写も、暗闇!パニック!いきなりドーン!みたいなオーソドックスな動的ホラーがメインではなく(そういうのもあるにはあります)、どちらかと言えばジャパニーズホラーのようなじめじめした雰囲気で恐怖を煽ってくることが多いのもよかったなと。

切なく心に残るストーリー

本作は分類上ホラーに属するゲームですが、内容的にはホラー一辺倒ではありません。

むしろ物悲しい人間ドラマに重点が置かれています

特に後半からは敵が一切出てこなくなり、主人公レイが抱える心の闇や隠された真相を探っていくような展開になるので、ホラーというよりもアドベンチャー的なテイストが強くなってきます。

この後半以降に本作の面白さが集約されており、

前半部分で見受けられた断片的で時系列がよく分からない描写の数々が、後半になるにつれて時系列を整理できるようになっていたり、

初見では単なる恐怖演出としか思わなかった描写が、進めていくと実はそれにも意味があるのが分かったりと、

点と点がしっかり意味を持って線に繋がっていくため、ストーリーは理解しやすく面白いです。

スケール自体は小さいものの、それ故に手堅くきっちりまとまっているなという印象。

そしてストーリーを全て理解した時の切なさ/やるせなさは如何ともしがたいものがありました。

説教臭さや教訓めいたもの、製作スタッフの意見の押し付けなどは一切ないだけに、余計心に切なさが去来してきますね。

「返校」というタイトルも、副題の「Detention」含めなるほど納得という感じでした。

detention-拘禁、拘留

ちなみに考察要素もあるにはありますが、それは細部に留まっており、物語の大筋は普通にゲームを一通りクリアするだけで理解できるようになっています。

なので、解釈を委ねてくる系のゲームが苦手な方でも手を出しやすい作品かなと。

翻訳が自然

このゲームは翻訳が極めて自然です。

全体を通して非常に丁寧であり、特にレイの心情を言葉で表現する難しい場面などもぎこちなさが見受けられません。

このため、海外産ゲームで時々ある「ローカライズが今一つで物語への没入を妨げる」みたいなことは一切ありませんでした。

重箱の隅をつつくなら、17歳の女子高生であるレイが「私をそこらの小娘と一緒にしないで」という仰々しい言い回しをしたのがちょっと違和感あったかな程度です。

それ以外は完璧と言っていいんじゃないでしょうか。

「間違いなくスタッフさんの中に日本語が堪能な方がいたんだな」と確信できるレベルでした。

悪かった点

ロードがやや長い

プレイするハードにもよるかと思いますが、ロードの長さは少々気になりました。

自分はスイッチ(TVモード)でプレイしたんですが、スイッチだと部屋に出入りするたび5秒程度のロードが比較的コンスタントに挿入される印象でした。

他ゲーの話になりますが、つい先日ロード爆速のゲームをクリアしたばかりだったので、その影響もあってちょっと気になってしまいましたね。

ただその分、ロードを嫌って効率良く部屋を回って攻略しようというスタンスで結構考えながらプレイできたので、まぁその点は悪くはなかったかなと。

ホラーの方向性が少し中途半端

本作はプロローグとエピローグを除くと全4章構成であり、1章2章を前半・3章4章を後半に分けると、前半と後半でホラー部分の作りにかなりの差があります

前半部分は敵が2種類登場し(上述のゲーム概要を参照)、そいつらから逃げるちょっとしたアクション要素があるんですが、後半はそういう要素が一切なくなり、雰囲気で恐怖を煽る路線に急にシフトします。

後半はホラーというよりも真実に迫るパートであり、敵からの逃げ要素はむしろ邪魔なので路線変更自体は歓迎できるものの、ゲーム全体を見ると、前半と後半のホラーとしてのテイストのギャップには違和感を拭えませんでした

オーソドックスなホラーと見せかけて実は…という作りなのは分かりますが、正直どっちかに統一して欲しかったというのが率直な感想ですね。

「ホラーゲーム」を期待してプレイすると、ちょっと肩透かしを食らうかもしれません。

また、前半は動的ホラーとしての作り込みが少々甘いのも考えもの。

というのも、1章では敵を引き付けるアイテムである「一膳飯」が出てくるんですが、このアイテム、効果的に使える場面は一か所しかありません

それ以外はゴリ押しでどうとでもなる上に、そもそも一膳飯は保健室でしか入手できないので、使いたくてもイチイチ取りに行くのが面倒。

おまけに一膳飯も一膳飯が有効な敵も、1章にしか登場しないというもったいなさ。

という具合に、ブラッシュアップがちょっと足りてないのかなと思ってしまう部分はありました。

せっかく敵もアイテムも作ったんだから、せめて2章にも出してほしかったですね。

おわりに

以上、『返校』のクリア後レビューでした。

ストーリーと演出が高い次元で調和している秀逸なゲームです。

ゲームを選ぶ際、物語の面白さを重視している方であれば、間違いなくマストバイな作品だと思います。

多少のグロやホラー要素を許容できるなら、プレイしてみて損はないかなと。

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