はじめに
ここでは、『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.6「対交錯事件」』をクリアした感想をつらつら書いていきます。
※核心部分のネタバレはありませんが、クリア後の観点から書いているため、ややネタバレ注意です
本作は、癸生川シリーズ第6作目にあたる作品です。
シリーズお馴染みのメインキャラであるシナリオライターの王生と、癸生川の助手である伊綱の二人を切り替えながらストーリーを進めていくというこれまでとは一風変わった内容となっています。
その性質上、複雑なゲーム構成となっているので、初見プレイの場合内容の理解には少々時間がかかるかもしれません。
が、推理要素はシリーズトップクラスでクオリティも高く、一つの推理ADVとしての完成度の高さは凄まじいです。
やってよかったと間違いなく断言できる一作と言えるでしょう。
と、前置きが長くなってしまいましたが、以下本題。
ゲーム概要
ストーリー
ある日の癸生川探偵事務所。
癸生川の助手である伊綱が事務所で待っていると、一人の依頼人が訪ねてくる。
依頼人の名は原田。
彼は大手の広告会社に勤めており、自身が勤める会社の同僚への尾行調査を依頼したいという。
調査は一晩だけで構わないという依頼にやや不可思議さを覚えた伊綱だったが、これを引き受け、ちょうど暇を持て余していた王生に連絡して調査の協力を要請する。
結果、特に何も問題は起こらず依頼は完了。
しかしその一カ月後、王生以外出払っている事務所で、今度は原田と同じ広告会社に勤める原という男性が訪ねてくる。
王生が話を聴くと、原には社内で親しくなった女性社員がいるらしいのだが、つい先日彼女が突如として失踪してしまったため、捜し出して欲しいとのこと。
事情を聴いた王生は半ば勝手に依頼を引き受け、早速調査に乗り出す。
だがこの依頼が、去年から続く連続殺人事件へと繋がっていき・・・。
本作の特徴
オーソドックスな推理ADV
本作を含め癸生川シリーズは、
・見る
・話す
・調べる
といったコマンドを選択しながら進めていくスタイルのオーソドックスな推理アドベンチャーなゲームとなっている。
伊綱と王生の視点を切り替えて進めるストーリー
今作では、一つの事件を伊綱と王生二人の視点を切り替えながら進めていくという新たな試みがなされている。
視点の切り替えはいつでも可能であり、必要に応じて切り替えつつ事件の謎を追っていく。
どう進めるかに関してはある程度プレイヤーの裁量に任されており、いつどこで切り替えるのかはプレイヤーの自由。
ただし、片方のストーリーが一定のポイントまで進むと、途中で一旦進行がストップし、もう片方の視点に強制的に切り替えとなる。
そのため、完全に自由というわけではないが、フラグミスによって進行不能になることもない。
複雑な事件ではあるが、プレイしづらいと感じることはおそらくないだろう。
感想
良かった点
二人の視点で進んでいく複雑怪奇な事件
今作の事件は、ただでさえ事情が込み入っていることに加え、二人の視点を切り替えながら進んでいくという複雑な物語構造が特徴となっており、シンプルに難易度が高いです。
これまでの作品のように、早い段階で犯人が分かることはなく、注意深く進めていかないと間違いなく分からないと思います。
実際、自分は最後の最後まで犯人が分かりませんでした。
また、ミスリードも多く、前提条件を誤認させるギミックもそこかしこにあるため、プレイ中は翻弄されることが多かったですね。
ただ、事件自体は複雑でもしっかり内容を咀嚼すればストンと腑に落ちるので、ちょっと気合いを入れる必要こそありますが、かなり面白い作品だったと思います。
ほんと前作との落差がすごい。
地味に多い探偵要素
癸生川シリーズは、主人公で探偵の癸生川を操作する機会がほぼほぼないため、探偵の名を冠する作品なのに探偵っぽいことができないのがネックでした。
が、今作では実際に尾行調査をプレイヤーができるパートがあったり、調査で得られた情報は何か答えるところがあったり、適切な会話をして相手から必要な情報を引き出す機会が多かったりと、過去作と比較して探偵っぽいことがかなりできるようになっていました。
操作するのは癸生川ではなく王生ではあるんですが、ここはシンプルに評価できる部分ですね。
あと、尾行調査は最終的に点数化され、伊綱による講評みたいなものがあります。
自分は凡ミスしまくって68点を叩き出しました。
悪かった点
真犯人の背景に関して
いささか気になった点。
今回の事件の真犯人は間違いなく一発死刑レベルの殺人を犯しているんですが、なぜそんなことをするに至ったのかの背景がプレイヤー視点からは全く見えてきません。
プレイ中は全く分からないのに、終盤の伊綱による推理ショーで一気に明らかになるというなんだか唐突感を否めない流れになっています。
これに関しては伏線とかも全然ないので、余計唐突に感じてしまいました。
素で「え?初耳なんだけど」ってなるかなと。
まぁそれが事件の内容にツッコミどころを与えているとかは一切ないんですが、事件のクオリティが高いだけに引っかかる部分ではありましたね。
主人公の出番が・・・
今作は、いつにも増して主人公である癸生川の出番が少なかったように思います。
最後の方はしっかり決めてはいますが・・・。
癸生川は下手に出張ってしまうと、プレイヤーの立つ瀬がないほど無双してしまう危険性があるので扱いが難しいところですが(海楼館殺人事件を参照)、やっぱりある程度は活躍を見たいところではありますね。
おわりに
以上、『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.6「対交錯事件」』のクリア後レビューでした。
推理ADVとして見ると、シリーズの中でも1、2を争う出来だったと思います。
巧みなミスリードに騙されっぱなしでした。
少々骨太な物語でプレイには結構体力がいりますが、プレイしてみて損はないかなと。