はじめに
ここでは、『モナーク』をクリアした感想をつらつら書いていきます。
※クリア後の観点から書いているのでネタバレ注意です
本作は、2021年にフリューから発売されたRPGで、謎の結界によって外部から遮断された学園を舞台に、「契約者」と呼ばれる異能の力を行使する人間達の戦いを描いた学園ものの作品となっています。
独特の戦闘システムと陰鬱な世界観と不親切な仕様の数々で構成されるという結構尖ったゲームなので、大分人を選ぶかもしれません。
ということで、以下本題。
ゲーム概要
ストーリー
新御門学園。
中高一貫のこの学園に、ある時突如として結界が出現。
結界は学園一帯を丸々覆い、外部との接触を完全に断ち切ってしまう。
それとほぼ時を同じくして、学園内のいたる所で霧が発生。
霧に長時間晒されてしまった生徒は正気を失い、異常行動を起こすなど学園内は瞬く間にパニック状態に陥る。
それから一週間後。
異様な状況の学園で、主人公が眠りから目覚める。
主人公は自らに関する一切の記憶を失っており、運良く生徒会長や校医らに保護されるが、それも束の間、突如として謎の異世界に飛ばされてしまう。
その異世界―異界には、「悪魔」と呼ばれる人ならざる存在が跋扈しており、悪魔の攻撃によって主人公は負傷。
万事休すかに思われたが、そこに「バニタス」と名乗る黒いうさぎのぬいぐるみが出現する。
バニタスは、主人公に働きかけて「権能」という異能の力を目覚めさせる。
権能を得た主人公は悪魔を倒し、無事現実世界に帰還。
その後主人公のことを知った学園長の神宮ソラは、主人公に接触しあることを依頼する。
それは、「主人公と同じく権能を得た人間―契約者を倒すこと」。
権能は現実世界の法則に反する力であり、その力を行使し続ければ「ユガミ」という形で現実に悪影響を及ぼしてしまう。
そして、今現在学園で発生している結界や霧もユガミによるものだという。
これらの事実を知った主人公は、契約者を倒し学園を元の状態に戻すため、仲間と共に契約者との戦いに身を投じるのであった。
用語解説
異界
悪魔が存在する異世界。
現実世界とは違い、認知によってのみ把握できる精神的な世界。
悪魔
異界に跋扈する人ならざる存在。
人間のエゴを糧とする。
悪魔には以下の三つの階級が存在する。
レギオン
下級の悪魔。
知性はなく、人間の言葉を壊れたラジオのように繰り返す。
ノーブル
中級の悪魔。
眷属器という装備を身に纏っており、レギオンよりも脅威。
モナーク
上級の悪魔にして悪魔の始祖。
レギオンやノーブルとは隔絶した力を持つ。
少なくとも7柱の存在が確認されており、それぞれが「傲慢」や「嫉妬」など7つの大罪のいずれかの名を冠する。
だが中には、「番外」という七つの大罪のいずれにも該当しない個体の存在も示唆されている。
権能
モナークとの契約によって得られる異能の力。
契約したモナークによって固有の力を与えられる。
ex)傲慢のモナークと契約―「肉体操作(他人を意のままに操れる)」の権能
暴食のモナークと契約―「略奪継承(他人の力を奪って自分のものにする)」の権能
いずれも強力な力ではあるが、現実で行使し続けるとユガミという悪影響を及ぼす。
霧や結界もユガミの一種。
契約者
モナークとの契約によって権能を得た人間。
モナークは資質のある人間と契約して権能を授ける代わりに、契約した人間が持つ強力なエゴをエネルギー源として取り込む。
イデア
契約者とモナークの力の源であり、契約の証。
契約者ごとに3つのイデアがあり、全て破壊すると契約者およびモナークを無力化できる。
イデアを破壊された契約者は昏睡状態に陥り、一部の記憶が欠落する。
本作の特徴
バディを組んで進めるストーリー
ストーリーでは、契約者を倒し学園を元に戻すため、「真生徒会」という組織を発足。
この真生徒会メンバーのうち1名とバディを組んで物語を進めていく。
※序盤は一人一人順番にバディになる
バディにできるメンバーは全部で4名。
いずれもユニットとして固有の性質がある。
日向望―タンク要員&ヒーラー
館凌太朗―遠距離アタッカー
駿河台こころ―汎用バッファー
弓田信哉―近距離アタッカー
また、物語の後半では、誰とバディを組むかによってその後の展開が変化する。
探索パートと戦闘パート
本作のゲーム部分は、大きく分けて二つのパートに分かれている。
まずは探索パート。
これは霧が立ち込めている空間を探索し、そのどこかにあるイデアに通じる入り口を探し出すことが目的。
じっくり探索すれば入り口を見つけることは可能だが、霧の中にいる間は「発狂度(MAD)」という値が常に上昇し続ける。
これが100%になってしまうと探索の続行ができなくなり、強制的に保健室からの再開となる。
そのため、常にMADに気を配りつつ、必要に応じて保健室でMADを回復させなければならない。
なお、MAD100%で続行不可になっても、それまでの探索状況は引き継がれる。
そのようにして探索すると、特定のポイントでイデアに通じる入り口を見つけるとスマホに着信が入る。
この着信に出ることでイデアがある異界に進入でき、イデアを守る悪魔達との戦闘に突入する。
戦闘に関しては以下詳述。
シミュレーションチックな戦闘
戦闘の基本部分は、コマンド式のターン制バトルというオーソドックスなスタイルだが、随所にシミュレーション要素が見られる。
移動はマス目のないフリームーブであり、キャラごとに決められている円の範囲内であれば自由に移動可能。
移動が完了するとそこから攻撃に移行する。
攻撃では射程距離内にいる敵を攻撃することになるが、この時自分が攻撃する敵の近くに味方がいれば、その味方がアシストして追撃を仕掛ける。
アシストは通常の攻撃よりもダメージが低くなるが単純に手数を伸ばすことができ、序盤~中盤はいかにアシスト回数を増やせるかどうかが総合火力を左右する。
また、敵の後ろから攻撃をするとバックアタックが成立。
バックアタックは通常の攻撃よりも与ダメージと命中率が上昇し、敵からのカウンター(こちらの攻撃に対する敵の反撃)を受けないため、一方的に攻撃ができる。
このように、敵味方の位置関係が戦略上重要となり、全体的にシミュレーション要素が強い戦闘となっている。
戦闘を彩るユニークなシステム
本作には、他にもユニークなシステムが戦闘を彩っている。
共感
本作における戦闘最大の目玉。
「共感」は主人公だけが使用可能な権能で、使用すると共感対象のユニットに付与されているバフ・デバフ・状態異常・権能(技)をトレースできる。
共感は味方1名を対象にするものから、敵1体を対象にするもの(敵共感)、周辺のユニット全てを対象にするもの(広域共感)、範囲内にいる味方のユニットのみを対象にするもの(全軍共感)など、状況に応じて範囲対象を変えることが可能。
これを上手く利用すれば、
・味方1名にしか付与されていなかったバフを味方全体に適用
・味方の権能を共感した全員が使えるようにする
・自分に付与されているデバフや状態異常を敵にも適用させる
といった芸当ができたりする。
バフだけでなく、デバフや状態異常などのバッドステータスもトレースしてしまうのは難点だが、使い方次第で多大な相乗効果が期待できる。
なお、共感は3ターンが経過するか、もしくは共感したユニットが1名でも戦闘不能になった場合に効果が切れる。
効果が切れる前に再度共感を使って持続時間を伸ばすことは可能。
また、共感は主人公のみが使える権能であるため、共感で繋がっても他のユニットが使うことはできない。
発狂
本作の目玉その2。
探索パートに関係するMADは、戦闘においても重要な位置を占める。
技の中にはMADを増加させるというコストと引き換えに使用できるものも多く、これによってMADが100%になると「発狂状態」に移行する。
発狂中は防御以外の全てのステータスが上昇するが、こちらの操作を一切受け付けない制御不能の状態になり、敵味方問わずユニットを攻撃してしまう。
その上、3ターン後には強制的に戦闘不能になるという多大なリスクも抱えている。
本作では、主人公が戦闘不能になった時点で即ゲームオーバーなため、これといった対策なしで主人公が発狂してしまった場合はほぼほぼアウト。
なので、主人公の発狂には特に気を配る必要がある。
※ゲームを進めていけば、発狂状態を解消させる技を覚えるユニットもいる
覚醒
本作の目玉その3。
人間のユニットにはAWAKEという専用ゲージがあり、攻撃をしたりダメージを受けたりすることでゲージが増加。
これが100%になると「覚醒状態」に移行する。
覚醒状態中は全てのパラメータが上昇し、MADが0%にリセット。
さらに技発動に必要なコストが一切なくなるという優れもの。
覚醒状態は共感可能であるため、上手くやれば味方全体を覚醒させたりもできる。
また、この状態でのみ使用可能な「覚醒技」という強力な固有技も解禁される。
※ただし、覚醒技を使用した時点で覚醒状態は終了となる
発狂覚醒
本作の目玉その4。
発狂と覚醒は調整次第で両方発動することができる。
これら二つが同時に発動すると、「発狂覚醒」に移行。
発狂覚醒中は、ステータス大幅アップに加え、覚醒のメリットはそのままに発狂のデメリットである制御不能がなくなるという完全にメリットの効果のみが得られる。
言うなれば覚醒の上位互換。
発狂覚醒も共感可能なため、上手くやれば味方全員を大幅に強化できる。
また、発狂覚醒中は、覚醒技に加え「発狂覚醒技」という専用の必殺技が解禁される。
※こちらも覚醒技と同様、使用すると発狂覚醒は終了する
リオーダー
本作の目玉その5。
「リオーダー」とは行動権の移譲を指し、自分の行動権が無くなる代わりに選択したユニットに再度行動させることができる。
※行動権の移譲とは言っても移動自体は可能なため、移動してからリオーダーという流れが無難
これを駆使すれば、
・火力の高いユニットにリオーダーを使って高火力攻撃を連発させる
・バッファーやヒーラーにリオーダーを使い、バフや回復技を重ねがけさせる
・リオーダーの連続行動で敵との距離を詰めたり、反対に敵との距離を取りやすくさせる
といった芸当が可能に。
リオーダーされる側に制限はなく、例えば6人パーティの場合、5人が1人にリオーダーを使えば、1人で最大6回の行動が可能。
眷属
『モナーク』では、バディの他に「眷属」という悪魔が仲間になる。
眷属は、ストーリーの節目ごとに、かつ主人公のパラメータの一つである「エゴ」が高い順から加入していく。
例としては、一定部分までストーリーを進めた時点で暴食のエゴ値が高ければ暴食の眷属が、次に嫉妬が高ければ嫉妬の眷属が仲間にという具合。
眷属は対応するエゴによってそれぞれ性能が異なり、七つの大罪にちなんで全部で7体を仲間にできる。
性能については以下の通り。
傲慢―近距離アタッカー&ヒーラー
憤怒―物理特化型アタッカー
嫉妬―汎用アタッカー
強欲―近距離アタッカー&位置操作のスペシャリスト
暴食―近接寄り万能アタッカー
怠惰―遠距離バッファー
色欲―遠距離特殊アタッカー
また、眷属は「眷属器」という装備を頭部・胴体・脚部の3つの部位に装備することが可能。
眷属器は敵を倒したり、マップのクリア報酬などで入手できる。
ノーマルからEXまでレアリティが全部で5段階存在し、レアリティが高いほど強力な装備となる。
心理テストを楽しめる診断
エゴは戦闘に絡まないパラメータではあるが、上述のように主に眷属の入手条件に関わってくる。
このエゴは、主に「診断」という心理テストを受けることによって上昇させることができる。
診断は、一般の生徒に話しかけたり、バニタスとの会話によって発生し、そこで選んだ答えに応じて対応するエゴの数値が上昇する。
問題ではなく診断であるため明確な正解はなく、どれを選んでも数値がマイナスにはならない。
特にゲーム開始時にある診断は重要であり、ここでどのような結果になるかで仲間になる眷属が変わってくる。
診断はエゴを強化するのと同時に、シンプルに心理テストとしても楽しめるので、積極的に活用したいところ。
ちなみに診断は全部で40種類以上ある。
感想
良かった点
戦略性の高い共感システム
戦闘の醍醐味である共感は、斬新かつ有用なシステムで使ってて非常に面白かったです。
ギリギリまでMADを使い込んで覚醒共感でコストを帳消しにしたり、
敵の覚醒を共感でトレースしつつ覚醒技で即解除させたり、
敢えて味方を発狂させて敵地に送り込んだり鬼かお前、
など、使い方次第でいくらでも応用が利く懐の深さがよかったですね。
惜しむらくは共感が主人公中心であった点。
もし主人公以外の誰かと誰かを共感で繋げたら面白くなるなと思う場面は結構あったので、もし次回作があればそういう使い方ができるようにしていただきたいです。
OPが素晴らしい
このゲームOPの出来が凄まじいです。
詳しくは実際のOP映像を見ていただきたいんですが、「これマジでフリューゲーか?」と疑うレベルでかなりしっかり作られています。
好みの問題とは思いますが、こういう二次元と3Dを行き来する映像表現が大好物なので、個人的にぶっ刺さりましたね。
発狂から発狂覚醒を経て、おぼろげな自らの実体がくっきり顕現する流れは素晴らしい。
というかOPは3Dのグラフィックが良くできてるのに、なんで本編は・・・。
キャラデザの良さ
キャラデザは素敵です。
特に思装という戦闘専用の衣装のセンスが好きでした。
白/黒/灰の3色しか使ってない上に、単純に制服の上から纏ってるだけなのにすごくオシャレです。
悪魔の王に等しいモナークから力を授けられたという設定上、契約者には王冠があるのも中二感あっていいですね。
良質なBGM
戦闘BGMは、カリギュラシリーズのようにボス戦が歌付きの曲になっていたりしてクオリティが高いです。
ボス戦だけ急に歌になるのはちょっと違和感ありますが、楽曲自体は耳に残りますね。
特に「ニヒル」、「Ash」、「強欲」、「Gunpowder」「君の望み、君の願い」あたりが自分好みでした。
悪かった点
感情移入が難しいストーリー
ストーリーは決してつまらなくありません。
大筋は最初から最後までブレないし、伏線の配置や回収がきっちりしてるし、大きな破綻やツッコミどころもないしといった感じで、ライターさんがちゃんと物語全体を掌握しています。
なのでその点は安心して見ていられるんですが、中身自体はちょっと薄味だなと思いました。
なんというか一つ一つの描写が浅いんですよね。
表現が難しいんですが、キャラをある程度理解するための必要最低限の描写しか触れられない感じ。
こっちとしてはそのキャラのことをもっと知りたいのに、ストーリー(少なくとも中盤まで)ではあまり掘り下げてくれないのでイマイチ感情移入ができません。
サブイベントや個別のキャラエピソードといったものがないのも、感情移入の難しさに拍車をかけます。
そして、この問題が悪い意味で作用してしまうのが中盤。
中盤はとあるキャラの死がきっかけで4つのルートに分岐することになるんですが、前述の通り登場キャラ達への感情移入がロクにできてないままあるキャラが死ぬので、死んでしまって悲しいというよりも置いてけぼりを食らった気分に陥るんですよね。
内容的にはまさに鬱イベントって感じなんですが、こっちとしてはぶっちゃけその死を悲しめるほど愛着が湧いてないんだよなって話。
もっとぶっちゃければ、(これはあくまで自分の場合ですが)ちょっと出番の多いNPCが急に死んだぐらいの認識しかありませんでした。
なのに主人公を含めた周囲の人間は滅茶苦茶悲しみに包まれるので、その雰囲気と自分の気持ちとのギャップが凄まじくてある意味悲しくなりましたね。
しかもルートによっては主人公が仇をとるためにマジ切れするし。君そんなに可愛がってたっけ?
まぁ終盤はそれなりに熱い展開にはなるんですが、自分的には中盤で興味の糸が切れてしまって素直に楽しめなかった感じがあります。
不親切な部分が多い
新規IPということもあってか、『モナーク』には不親切だと感じる部分が多かったです。
全部書き出すと長くなるので、いくつかピックアップします。
死ぬほど分かりづらい傷害譲渡
戦闘面において個人的に一番気になったのは、敵に付与されているバフが分かりづらかった点。
このゲームでは、「傷害譲渡」という自分が受ける攻撃を近くのユニットに肩代わりさせるバフがあるんですが、これがパッと見ではかなり分かりづらいです。
イチイチ敵のステータス詳細を見ないと確認できません。
なので、「傷害譲渡がかかっている敵に攻撃→効果によるダメージ反射で味方死亡」というケースが頻繁にあり、かなりのストレスでした。
特に序盤は主人公で攻撃→傷害譲渡で反射&死亡が何回あったことか・・・。
しかもうざったいのがこのバフ、発動するまで効果が永続するんですよね。
他のバフはどれも持続ターン数が決まってるのに。
だから数ターン経った後、傷害譲渡がかかっていることを忘れてて攻撃→反射で死亡パターンも結構ありましたね。
バフとしては脅威の部類に入るものなので、パッと見で分かるようにしてほしかったなというのが率直な感想です。
フィールドギミックが分かりづらい
あと、分かりづらいという点で言えば、フィールドギミックの効果が初見だと把握するのが難しいというのもありました。
マップによってはフィールド内に特定の効果をもたらすギミックが設置されているんですが、毒や回復はまだしも、他の効果に関しては初見だと誰かが食らってるところを見ないと分からないものが多かったです。
上の画像で言えば、緑のキラキラしたアイコンが回復、紫の毒々しい感じなのが毒という風に分かりやすいですが、
灰色の通行止めみたいなアイコンは封印デバフ(権能が使えなくなる)、茶色のグルグルしたアイコンは混乱デバフ(操作不能になる)となっています。
封印はまぁ分からんでもないですが、混乱は初見だとほんと謎でした。
敵が食らってる様を見て初めて、あーそれが混乱かと理解したレベル。
あと、実は上の画像にはもう一つギミックがあるんですが、何か分かりますか?
答えは画面中央にある四角い渦巻きのエリア。
これは言うなればテレポートで、この四角のエリアに乗ると対応する四角エリアにワープします。
・・・パッと見じゃ絶対分かりませんよねこれ。
初見の時はこれが何なのか分からなかったせいで、戦闘プランが見事に崩れました。
混乱とかもそうですが、こういう見ただけじゃ分からないギミックは最初に説明入れとくべきだと思いますよスタッフさん方・・・。
ゲーム中だと一切の確認ができないわけですし。
フィールド全体を確認しづらい
敵味方の位置関係や地形が重要だったり、ギミックがそこかしこにあったりなど、戦闘はシミュレーション要素が強いのにもかかわらず、フィールド全体を見回すことが難しいです。
カメラのズーム機能を使えばある程度は見渡せますが、自由に見回すことはできず、全体図を確認したい場合はスタート画面のマップを見るしかありません。
これも地味にだるかったですね。
共感システムの関係上、マップがそこまで広くなかったのは救いでしたが。
あとマップに関しては、現実の方が悲惨です。
というのも、現実世界では学園の大まかな全体図やミニマップこそありますが、場所ごとの詳細マップが存在しません。
なので探索する場合は、ミニマップとにらめっこしながらになります。
・・・これスタッフさん達何も思わなかったんですかね?
なんでミニマップは作ったのに普通のマップは用意しなかったんだ・・・。
ミニマップはあっても詳細マップがないゲームはこれが初めてでした。
ソート機能が物足りない
全体的にソート機能はシンプルに使いづらいです。
装備のソートはレアリティ順ぐらいしかできないし、アドレスのソートは狩場整理とかしたいのに上手くできないし、共感中の権能にいたってはごちゃごちゃになるのに一切ソートできないという始末。
ちゃんとテストプレイしたか疑いたくなるレベルでした。
特に戦闘中なんかは、使いたい権能を探す作業だけで毎回時間取られるのがもううざったくて・・・。
この探す時間を全部合計したら、多分1時間半はかかってると思います。
あとこれはソートとは違いますが、アイテム関連の整理されてなさも気になりました。
例えば回復薬を10個持ってたとしても、「回復薬×10」ではなく
回復薬
回復薬
回復薬
回復(以下略
とクソ律儀にリストで表示してくれるので、スクロールがめんどくさいことになっているのもちょっとイラっとする要素でしたね。
拙いグラフィック
本作はフリューの新規タイトル(開発はランカース)ということで、グラフィックは期待していませんでしたが、やはりというか案の定というかグラフィックは残念な出来栄えでした。
とてもじゃないですが、令和に発売されたフルプライスの作品とは思えないレベル。
はっきり言ってps2とどっこいどっこいです。
グラフィックに関しては『カリギュラ2』の記事でも割とボロクソに書きましたが、『モナーク』はそれを下回る出来だったと思います。
モーションパターンがなさすぎるとか、ムービーがモッサリとか、演出がしょぼいとか言いたいことは色々ありますが、何と言っても表情が固い。
というか表情のパターンがほぼ真顔しかありません。
ギャグの時もシリアスな時もえぐいシーンも表情は一つ、真顔のみです。
個人的にはこれが大分没入感を妨げていたように思います。
せっかく声優陣が素晴らしい演技をしているのに、グラフィックが全くそれについて行けてない。
この如何ともしがたいちぐはぐ感は一昔前のゲームを思い出しました。
カリギュラはカリギュラで拙かったけど、まだ笑うとか怒りとか悲しみの表情はあったのになぁ。
まぁ辛うじて口パクがあるのは評価できるかな・・・。
レベル上げ前提のゲームバランス
最近のゲームとしては珍しく(?)、本作はレベル上げ前提のゲームバランスとなっています。
例えば、仮にステージAのボスのレベルが30とした場合、その次のステージBのボスのレベルは35、またその次のボスのレベルは40、というようにストーリーが進む速度以上にハイペースで敵が強くなります。
当然雑魚のレベルも上がるので、ステージAの頃はレベル30ぐらいで事足りたのに、ステージBに入った瞬間いきなり5も上の敵達と戦わなければならなくなるため、ストーリー外でのレベル上げ必須です。
ちょっとでも戦闘をサボると、みるみるうちに敵との強さが引き離されていきます。
なのでどうしてもプレイ時間は増えがちでした。
自分の場合、真エンドクリアまでに70時間かかりましたが、そのうち半分近くはレベル上げしてたと思います。
レベリングの必要がなかったなら、多分30~35時間ぐらいでクリアできただろうなという感じです。
自分はこういう稼ぎ作業はそこまで嫌いじゃありませんが、楽しかったかと聞かれれば「うーん…」としか言えませんね。
なので、レベリングを苦痛に感じる方にはちょっとおすすめできないかなと。
ただ、色欲と強欲の眷属が仲間になると一気にぬるくなるので、戦闘自体はそこまで難しくないのは救いですかね。
モナークや眷属に関して
このゲームを彩るモナークや眷属といった悪魔達にも気になった部分がありました。
まずはモナーク。
モナークは設定上は最上位の悪魔であり、高度な力と知性を有するわけなんですが、ストーリーだとほとんど活躍しない上に喋りません。
イデア3つ目を壊す時に契約者に呼ばれて参戦する以外はほぼ空気であり、半数以上のモナークがただ倒されるためだけにしか存在しないという有様になっています。
流石にこれは味気なかったですね。
モナークはタイトルにもなっているほど花形の存在であるはずなのに、活躍どころかどんな性格なのかすら分からないままフェードアウトする奴が多かったのは、ちょっとどうなのって感じでした。
まぁストーリーにガッツリ絡んで喋り倒すモナークもいるにはいますが、そういうのはごく一部です。
この点は悪い意味で期待を裏切られたかなと。
あと、眷属は設定上喋らないのは仕方ないにしても、ビジュアルに個性がないのは残念でした。
ビジュアル自体はプレイヤーがある程度自由にカスタマイズできますが、どうカスタマイズしようが結局は骸骨なので、面白みがあるかと言われれば個人的には首を傾げざるを得ません。
ただ、この点に関しては面白さを見出すプレイヤーもいると思うので、人によりけりだと思います。
主人公の台詞が全て選択形式
主人公は感情移入させやすくするためか、ボイスがないタイプの主人公なんですが、台詞がないわけではありません。
で、本作では主人公の台詞になるとイチイチ選択肢が発生し、どれか一つ選ばないと会話が進まないようになっています。
シンプルにテンポが悪いです。
「そこは別にいらないだろ」って所でも選択肢が出てくるのでなおのことテンポが悪かったなと。
「・・・」の一択を選ばせてくる時なんかは溜息が出るほどでした。
ただし、そういう風になっているのは開発者の林風肖さん曰く、意図してそうしているらしいです。
──『モナーク』でも、主人公のセリフはすべて選択制ですよね。能動的であることだけでも十分だと思う部分もあるのですが、なぜあの演出を採用したのですか?
https://news.denfaminicogamer.jp/interview/211018a
林氏:
「ボタンを押さなかったら進まない」というのも、ひとつの選択だと考えているからです。自分が働きかけることでようやく世界が動くというのは、ゲームならではだと思うところが大きいので。だからこそ、その面白さや責任を強調したということです。ゲームで何かを選択するということは、世界の手触りを感じられることなんじゃないですかね。
詳しくはURLから飛んで見ていただきたいんですが、「なるほど一理ある」という感じではありました。
ただ、やっぱり「こっちとしてはもっと快適に遊びたかったなぁ」とは思ってしまいますね。
林さんの開発者としてのエゴがあるのは分かりますが、こっちにもプレイヤーとしてのエゴがあるので。
おわりに
以上、『モナーク』のクリア後レビューでした。
エゴ・狂気・共感といった精神的な要素をゲームに落とし込んだ作品です。
こうして見るとボロクソに悪かった点を書いてますが、総評としては「つまらないの一言で斬って捨てるにはもったいないゲーム」だと思います。
それぐらい光るものは感じられました。
世界観はダークかつ平然と人が死ぬサイコな感じだし、共感や発狂はありそうでなかったアプローチで面白かったですしね。
まぁ本当につまらなかったら、70時間もプレイしてないって話ですし。
ただ、如何せん全体的に遊びづらさがあるのは否めませんでした。
不親切な部分や不便な部分がいたるところに散見されるし、グラフィックがアレだし、慣れるまでに結構苦労するし、慣れても時間も食うしで令和に出たフルプライスの作品としてはクオリティに疑問が残るかなと。
まぁスタッフサイドが明らかにターゲットを絞ってきている感があるのはものすごく伝わってきますが。
でももし次回作があるなら、次はもっとユーザビリティに目を向けていただきたいですね。
カリギュラからカリギュラ2もその点はしっかり改善されていたので、『モナーク』にも期待してます。