はじめに
ここでは、『悪夢の妖怪村』をクリアした感想をつらつら書いていきます。
本作は1985年に鳥井加南子(現:鳥井架南子)さんによって書かれた『悪夢の妖怪村』というゲームブックを、switchにゲームとして落とし込んだホラーアドベンチャーとなっています。
ゲームブック
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF
読者の選択によってストーリーの展開と結末が変わるように作られ、ゲームとして遊ばれることを目的としている本である。「アドベンチャーゲームブック」・「アドベンチャーブック」とも呼ばれる。
2011年にもDSiウェアでゲーム化されていますが、本作はそこからUIやイラストなどが一新されたリメイク版です。
なので、メモなどを用意しなくてもシンプルにゲームとして楽しめるような作りになっていると言えるでしょう。
ということで早速概要に入ります。
ゲーム概要
ストーリー
時代設定は現代ではなく、このゲームの原作が発売された1980年代。
最新の小型ビデオカメラを手に入れた「君」は、ある時妖怪村の噂を耳にする。
その噂によると、なんでも廃村になっている田舎の村に妖怪達が棲みついているとのこと。
そして妖怪村に足を踏み入れた人は誰一人帰ることは叶わず、行方知れずになっているという。
それを聞いた君は、恐怖以上に「妖怪をカメラに収めれば一儲けできるのでは」という金銭欲に駆られ、単身妖怪村を訪ねることに。
わずかな所持金と携行品をリュックに詰め現地に到着した君だったが、気がつくと村に閉じ込められてしまったことを知る。
妖怪達を撮って現実に帰るため、君は手掛かりを求めて村の探索をするのであった。
本作の特徴
ゲームブックなアドベンチャー
はじめにでも述べたように本作は、ゲームブックをゲームに落とし込んだホラーアドベンチャーとなっている。
実際、ゲーム中でもページをめくる演出や、選択肢を選んで指定のページ数に飛ぶという形で本としての要素を忠実に再現。
テイストとしてはまさにプレイするゲームブックといったところ。
また、ゲームの基本的な流れとしては、選択肢を選びながら村の各地を探索し、遭遇する妖怪と会話したり撮影したりしていく。
運命数とバイオリズム数
独自要素。
このゲームでは最初に運命数とバイオリズム数という数字が決められる。
運命数は、最初に遭遇する妖怪であるアミダババアのあみだくじによって、1から9のうち1つを決める。
チェックポイントから始める場合は自分で決められる。
バイオリズム数は自分で決めることはできず、ゲーム開始と同時期にランダムで決定。
こちらは運命数とは違い、如何なる場合でもランダムで自分で決められない。
作中ではこれらの数字によって展開が変化する仕組みになっており、
命の危機が迫った時、運命数が〇だから助かった
や
バイオリズム数が〇〇だからピンチor死亡した
といったように、数字次第で運良く助かったり理不尽に死んだりする。
不確定要素ではあるがベストエンドに至るルートだと、自分で決められないバイオリズム数で理不尽な目に遭うことはおそらくない。
感想
良かった点
ホラーだけどシリアスではないテイスト
本作は分類上ホラーではあるものの、ストーリーや作中の雰囲気はそこまでシリアスでも暗くもありません。
主人公は「金儲けがしたい」という俗物的な考えから妖怪をカメラに収めまくる変人人間だし、
妖怪はノリがよかったりヒントを教えてくれたりと結構話が分かるし、
地の文は一定の威厳を保ちつつもどこか軽やかで親しみやすい、
という具合に全体的にとっつきやすいです。
まぁ要所要所ではしっかりホラーしてますが、それ一辺倒ではないというのはよかったですね。
話の展開も、(写真を撮りつつ)妖怪と会話して脱出の手掛かりを探るというRPGっぽい流れで分かりやすいですし。
また、行動方針としては、
・何か出そうでもとりあえず進んでみる
・得体の知れない相手でも臆せずコミュニケーションを図る
・妖怪の世界とは言え、ルールとマナーを遵守する
を心掛けると基本的に上手くいきます。
あくまで「基本的に」ですが。
親しみの持てる妖怪達
前述の通り、妖怪の中には話の分かる奴が結構いて、こちらが対応を間違えなければ襲ってきません。
もちろん問答無用で危害を加えてくる妖怪もいますが、そういう奴は思っていた以上に少なかったなという印象です。
また、ユニークな妖怪も多く、
・「TVクルーとして来た」という主人公の嘘を真に受け、ハイテンションで色々なポーズをとって撮影を促すヤブレガサ
・本人は驚かすつもりだったのに、主人公に笑顔で話しかけられキョトンとしてしまうノッペラボウ
・井戸で恨めしげに「皿が一枚足りない」と言っているところに、コンビニで買った皿を渡すとすごく喜んでくれるオキクサン
など、見た目は怖いのに意外と茶目っ気があったりして面白かったですね。
こういうホラーとコミカルのバランス具合は絶妙だったと思います。
行き詰まることがあまりない
本作にはヒント機能が存在し、重要アイテムの隠し場所や特定のポイントで取るべき行動などの情報が提示され、先に進めやすいです。
しかもこのヒントはシステムデータに保存されているためか、セーブデータを跨いだり最初からやり直してもしっかり記録されています。
なのでそういう意味では行き詰まるということがほぼありませんでした。
また、ヒントが用意されていないポイントでゲームオーバーになっても、「あの時あそこでああしていたら死ぬことはなかったのに」というようなモノローグが流れるので、死んでも何かしらの情報が手に入り、次に生かしやすいです。
死んで覚えることが多いゲームですが、振り返るとそんなにストレスはなかったなと。
悪かった点
選択肢を遡れない
ゲームブックでは先に進んでゲームオーバーだった時、「あ、この選択肢ダメだな戻ろう」ができますが、本作ではそういったことはできません。
一度選択肢を選んだが最後、どんな結果が待っていても遡ることは不可能になっています。
なのでトライアンドエラーをしたい場合はセーブデータを複数作った方がいい、というよりほぼ必須です。
一応チェックポイント的な機能はありますが、このゲームは好きなポイントにジャンプできる機能がないので、エンディング回収や妖怪をコンプリートしたい場合はなおさら複数セーブでやった方がいいかと思います。
自分は5、6個データを用意してやってました。
正解ルートが一つしかない
このゲームにおいて、ベストエンドに至るための正解ルートは一つだけです。
あとは全てゲームオーバーのバッドエンドしかなく、何度も死にながら正しいルートを見つける必要があります。
なのでどうしても作業ゲーになってしまうのはちょっと辛かったですね。
同じ場面を何度も見ることも多いですし。
あと正攻法とは違う抜け道でクリアした、というような変則ルートがないのも味気なかったなと。
存在意義の薄い行動履歴
メニュー画面では、これまでどういった選択肢を選んできたかという行動履歴を確認できますが、これは正直役に立ちませんでした。
というのも、行動履歴はこれまでの行動全てではなく直近3、4つのものしか見れない上、履歴から行動をやり直すということもできないためです。
全体像を見れないため、図を広げて埋めていく楽しみもありません。
せめてどこでどういうルート分岐があるのかが分かるのであればまだ使いようもあったんですが、そういったこともできないので、まぁ使うことがなかったですね。
おわりに
以上、『悪夢の妖怪村』のクリア後レビューでした。
原作がゲームブックのため、テキスト量が多いホラーゲームです。
その性質上、テキストアドベンチャーやノベルゲーが好きか否かで満足度は変わってくるかなと思います。
自分は原作を全く知らずにプレイしたんですが、この手のゲームは好きなので没頭できました。
結構コミカルな部分も多いので、ノベルゲーは好きだけどホラーは苦手という方にもおすすめです。
ちなみに、クリアまでの所要時間は大体5時間程度。
バッドエンド回収や妖怪写真のコンプリートを目指すなら6~7時間程度かかるかと思います。
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