はじめに
ここでは、『NG』をクリアした感想をつらつら書いていきます。
※クリア後の観点から書いているのでネタバレ注意です
本作は、2018年にエクスペリエンスから発売されたホラーアドベンチャーで、かくやと呼ばれる謎の人形に義妹を誘拐された主人公が、死の呪いをかけられながらも立ち向かっていくという作品となっています。
「心霊ホラーシリーズ」というシリーズの二作目にあたり、前作にあたる『死印』と世界観を共有していますが、登場人物および物語の舞台は一新されているため、本作からプレイしても問題ありません。
ただ、如何せん本シリーズはグロさが特徴の作品群なので、その点はかなり人を選ぶかと思います。
内容上、グロいスクショなんかもちょくちょく出てくるので閲覧にはくれぐれもお気をつけください。
ということで、まずは概要の方に移っていきます。
ちなみに前作のレビューは↓
ゲーム概要
ストーリー
1999年7月下旬。
高校最後の夏休みに入り、退屈な日常を過ごしていた鬼島空良は、ある夜義妹の愛海と共に帰宅すると、玄関付近に謎の黒いハガキが落ちていることに気づく。
ハガキには簡単な暗号が書かれている程度で気にも留めなかったのだが、その日を境に次々と謎の怪奇現象に見舞われ、ついには愛海が忽然と姿を消してしまう。
愛海を必死で探す鬼島。
と、そこに突如として「かくや」と名乗る人形のような謎の少女が現れる。
かくやは、愛海を攫ったのは自分だと言い、義妹を取り返したければ自分との「遊び」に付き合ってもらうことを要求。
その遊びとは、各地に存在する「怪異」という強い怨念を宿す亡霊に打ち勝つこと。
もし負ければ死が待っているという。
愛海を助けるため、鬼島は周囲の協力を得ながらかくやとの「遊び」に身を投じていくのであった。
本作の特徴
怪異と戦うホラーADV
本作は、「怪異」という強い恨みや未練を持って死んだ亡霊と戦うホラーアドベンチャーとなっている。
怪異は作中世界だと、都市伝説として語り継がれている知る人ぞ知る存在であり、ある場所に地縛霊のように留まっていることが多い。
この怪異達と対峙し、かくやとの遊びに勝つことが本作における主な目的となる。
また、ゲームの流れとしては、
①かくやによって怪異が選定
②その怪異の情報収集
③怪異が出現するポイントを探索
④怪異と対峙
が基本。
このうちプレイヤーが実際操作することになるのは、③と④。
①と②は基本的にストーリー進行で自動的に進む。
ポイント&クリック方式での探索
探索パートは、ポイント&クリックというADVではオーソドックスなスタイル。
提示される一枚絵の中で気になる部分をクリックし、アイテムや情報を収集していく。
一枚絵は移動する度に切り替わる。
また、探索では同行者を一人だけ連れていくことが可能で、特定の同行者でないと進めないポイントも存在する。
クライシスチョイス
物語の進行中、生命の危険が及んだ時に発生するイベント。
制限時間内に提示される選択肢の中から適切なものを選び、正解すればクリア、間違えば制限時間が大幅に減少。
ゼロになるとゲームオーバーとなる。
が、実際は間違えれば制限時間が即ゼロになる場合が多い。
サバイバルエスケープ
本作における事実上の戦闘パート。
これまで収集した情報やアイテムを駆使して怪異と対峙する。
怪異に弱点となるアイテムを直接投げつけたり、周囲の環境を利用して効果的にアイテムを使うなど、状況に応じて様々な対応が求められる。
ちなみにHPの概念はないため、一度でも失敗するとゲームオーバー。
最後のチェックポイントからやり直しとなる。
キュアとデストロイ
怪異は強い恨みや未練を残してこの世に留まっている亡霊。
つまり、怪異が留まっている原因を取り除けば、無理に倒さずとも成仏させることが可能。
このようにサバイバルエスケープで怪異の成仏に成功すると、キュアエンドという救済EDを迎える。
キュアエンドは円満に事態を解決することができ、基本的に何も犠牲を払わず終えられる。
逆に、無理矢理倒してしまうと、デストロイエンドという後味の悪いEDに移行。
デストロイエンドの場合は、怪異を倒せはしてもその怨念までは取り除けていないため、怨念が同行者に襲い掛かり、同行者が死亡してしまう。
死亡すると当然、その同行者は物語から退場する。
キュアとデストロイこれらのエンドはそれぞれの怪異ごとに設けられており、どのようにして怪異を倒していったかによって最終的に3つのエンディング(グッド・ノーマル・バッド)に分岐。
全員を生存させればグッドED
一人でも死なせるとノーマルED
特定の二名を死なせてしまうとバッドED
というように枝分かれする。
物語の大筋自体は大きく変わらないものの、このように仲間の生死がエンディングに影響するため、目当てのエンディングが見たい場合はキュアとデストロイの調整が必要となる。
ジャッジシステム
今作から登場した新たなシステム。
仲間と会話していると、時折選択肢が発生。
選択肢は文章ではなく主人公の表情であり、
激怒・不満・普通・微笑・笑顔
の5つから好きなものを選ぶ。
ジャッジシステムは頻繁に発生するが、どの場面においても明確な正解はなく、どれを選んでも物語の内容は変化しない。
単に「ジャッジシステムを選んだ直後の相手の反応」だけが変化する。
ex)〇〇君(主人公)も怪異好きだよね?
微笑を選択→お、君も好きなんだ
不満を選択→あれ、興味なかった?
そのため、激怒ばかり選んでいるからといって仲が険悪になることも、笑顔ばかり選んでいるから相手と親密になることもない。
ただし、ゲーム中には明確な数値こそ出ないが、好感度は数値化されているらしく、それが一定値を超えると終盤にプロフィールが更新される。
プロフィールはCG回収率に影響するため、CGのコンプリートを目指す場合はできるだけ好意的な反応を返すのが無難。
というように、ジャッジシステムとは事実上の好感度システムのようなものと思って差し支えないだろう。
感想
良かった点
怪異の醜悪なデザイン
怪異のデザインはどれも醜悪です。もちろんいい意味で。
目をそむけたくなるようなインパクトのあるフォルムで、強烈に印象に残ります。
前作の怪異は怖いというより生理的嫌悪感を煽られる感じでしたが、今作はシンプルに不気味でした。
が、怪異自体は自ら望んでそうなったわけではなく、「そらこんな風に化けて出てくるわな・・・」っていう悲惨な過去が明らかになるので、そういった外見と境遇のギャップもある種の見所。
自分はどちらかと言えば今作の怪異の方が好みでしたね。
童話がモチーフになっているというコンセプトも分かりやすくて面白かったですし。
男女関係なくひどい死に様
本作では人間がコンスタントに死んでいくんですが、その人間がどうやって死ぬのかというのをテキストとCGで濃密に説明してくれます。
端的に言ってかなりグロいです。
特にCGでは、老若男女関係なく惨たらしい死に様をはっきりと描いており、昨今のゲームではかなり攻めてる方だと思います。
いやぁ~男女平等が叫ばれて久しい今の時代にピッタリなゲームなんじゃないでしょうか(白目)
しかも驚きなのがこれでCERO:Dですからね。
首チョンパとかもあるのにZじゃないのか・・・。
仲間のアホ行動がほとんどない
この手のゲームって仲間がアホな行動をして自滅したり、余計なことをして周りを危険な目に遭わせたり、なんてことが少なくないですが、本作においてはそういったのは見受けられませんでした。
「まぁそこはそうするよね」という感じで、こちらの想像と大して変わらない行動をしてくれるので、そういう意味ではストレスがなかったです。
前作から変わっていない掛け値なしで評価できる部分だと思います。
また、前作の仲間は言わば運命共同体のようなもので、どちらかと言うと打算で繋がっている関係でしたが、今作は打算がありつつも主人公のために命を張ってまで協力してくれるので、なかなか連帯感があったのもよかったなと。
悪かった点
尺のバランス
ストーリーは7月下旬から8月終わりの一カ月強を描いていますが、この時間のバランスが少々歪です。
物語前半に登場する怪異は、一日では倒せず大体3、4日ほど探索した上で倒すんですが、後半の怪異になると一日もしくは一晩で探索してそのまま倒すという風に急激にスパンが短くなります。
探索のボリューム自体は前半も後半もそこまで変わりはしないものの、時系列で見ると急に弾丸スケジュールになるので、その点はどうしても気になってしまいました。
その割にラスボスとの決着がつくのが8/21で、エンディングは8/31に飛ぶので、別にそんな駆け足にならないでよかったんじゃ・・・と思いましたね。
イマイチ釈然としないエンディング
※ネタバレ注意
ストーリーは一応の決着こそ迎えますが、根本的な解決には至りません。
当面の危機は去ったものの、そう遠くないうちにまた問題が発生することが確定しています。
一言で言うなら「問題先送りED」です。
なのに主人公を含めた周囲の人間は、そのことに一切触れず全部終わった感を出すのでものすごい違和感がありました。
主人公なんかは「やっといつもの退屈な日常が戻ってきた」なんて言いますが、いやいや何も解決してないじゃんと突っ込まずにはいられませんでしたね。
キャラに魅力を惹かれない
個人的に思った点。
このゲームに登場するキャラは個性的と言えば個性的ではあるんですが、なんというか他の作品でもよく見る造形のキャラが多く、正直魅力を感じませんでした。
批判を恐れず言うなら、「テンプレもテンプレなキャラ設定」という感じ。
オカルトアイドルという奇抜なキャラもいるものの、それは前作にもいたしなっていう。
ストーリーがシリアスまっしぐらのホラーなので、それを壊さないよう無難なキャラ付けにしたのは分かりますが、正直テンプレからもう一歩踏み込んでほしかったというのはありますね。
ただ、ムーラン・ロゼという女性キャラの設定は面白かったです。結局何者だったんだ。
ラノベから飛び出てきたような主人公と親友
良くも悪くも無難なキャラ付けがなされている本作ですが、主人公とその親友については悪い意味で冒険しており、個人的には受け付けませんでした。
まずは主人公の鬼島空良。
彼は身体能力が飛び抜けて高い上に喧嘩も強く、裏の世界で行われる非合法な格闘大会で連戦連勝という強者。
そこで得たファイトマネーを基に一人暮らしをしている。
という人によってはあいててと感じる設定。
そして序盤はちょっとイキリ描写が目立ちます。
正直ひぇ~ってなりました。よくもまぁこんなコッテコテのキャラを主人公にしたなと。
まぁでもやってるうちに慣れはします。
あと主人公の親友である天生目聖司。
彼もきつい。というかこいつが一番きつい。
天生目はそこそこでかいヤクザの組長の息子で表向きは好青年。
が、裏では目的のためには非合法な手段にも平気で手を染める悪党。
主人公のような強さこそないものの、相手の弱みをチラつかせながら脅迫すること得意としており、ついたあだ名が「脅迫王子」。
警察の中にも弱みを握られている人間がおり、彼には逆らえないらしい。
という痛さを通り越してむず痒くなるレベルの設定です。
しかも脅迫王子というあだ名に対してはまんざらでもないという感じで、普段から結構イキってます。
こいつに関してはとにかく中二すぎてむずむずするという感想しか出てこなかったですね・・・。
主人公の時点で結構お腹いっぱいなのに親友もこれとか勘弁してくれと。変な所で冒険しないで・・・。
が、一応捻りとして、「天生目はオカルト系の話に弱い」という設定があり、オカルト関連ではポンコツを晒すこともあるので、そこまで人となりが鼻につくということはありません。
少なくとも主人公視点では、悪態を突きながらも気遣ってくれるいい奴ではあります。
まぁでも好きにはなれなかったですね個人的には。
初見殺し要素満載のゲーム性
様々な場面で多くの選択肢が発生する本作ですが、クライシスチョイスやサバイバルエスケープといった生命の危機が迫っている場面では、基本的にワンミス即ゲームオーバーです。
複数回発生する選択肢の場合、そのどれか一つでも間違えれば一発アウト。
初見殺しポイントが非常に多いゲームとなっています。
俗に言う死に覚えゲーです。
特に怪異との戦闘では、弱点や有効なアイテムが分かっていても、それをどこにどうやって使えばいいのか分からないことが多く、
敵の弱点であるアイテムを投げたはいいが、思ったように飛ばなかった
↓
敵の攻撃を食らってGAME OVER
みたいなことはザラにありました。
あと、投げたアイテムがちゃんと敵に飛んでいってもはたき落とされて終了みたいなのもあったりします。
なので多くの場合、トライ&エラーでこのアイテムをこう使ったらどういう結果になるのか確認しないといけませんでした。
あと木に向かってヨガの本を投げるのが正解とかもあったりして、これ初見クリア無理だろっていうのもあります。
幸い、リトライはすぐできるのでそんなにストレスは溜まりませんが、せめてワンミスぐらいは許容してほしかったですね。
面白みのないジャッジシステム
好感度に関係するジャッジシステムですが、これに関しては正直面白みを感じませんでした。
概要の方でも書きましたが、どの選択肢を選んでも直後の相手の返事が一言二言変わる程度で、物語の中身が変化したり相手の対応が徐々に変わっていくなんてことはありません。
言ってしまえば、ジャッジシステムは「ほんの少しだけ相手の返事内容が変わるという会話イベント」でしかないです。
ここを煮詰めようとすると間違いなく工数がかかると思うので致し方ありませんが、それでもこちらの選択次第で相手との関係性に変化があったりしたら面白かっただろうなぁとはどうしても思ってしまいますね。
おわりに
以上、『NG』のクリア後レビューでした。
気になるところが多くて不満点をくどくど書きましたが、一つのホラーゲームとしてはしっかりまとまっています。
即死や初見殺しが多いのはちょっとどうかと思いますが、個人的には十分楽しめました。
特に前作を楽しめた方なら間違いなくやって後悔はしないかと。
また、本作は15~20時間程度でクリアできるのでボリュームが物足りないという声も多いですが、個人的には割とちょうどよかったですね。
これ以上長いとなんかダレそうな気もするので。
ホラーってこの辺の塩梅が難しいよなぁ・・・。
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