はじめに
ここでは、『グノーシア』をクリアした感想をつらつら書いていきます。
※クリア後の観点から書いているのでネタバレ注意です
本作はプチデポットから発売されたSF人狼ゲームで、宇宙船を舞台に人間に化け、そして人間を襲う生命体「グノーシア」を見つけ出すために繰り広げられるデスゲームを戦い抜くという作品もなっています。
ゲーム概要
ストーリー
舞台はとある宇宙船。
医療用ポッドから目覚めた主人公は、記憶もまばらにセツと名乗る軍人から、
・この船には「グノーシア」と呼ばれる人間を襲う生命体が紛れ込んでいること
・グノーシアは、人間に憑りつき変質した存在であるため外見からは判別できず、排除するには乗員全員による取り決めでグノーシアだと思われる者をコールドスリープさせる他ない
という説明を受ける。
置かれた状況に戸惑いながらもその後乗員同士で議論を重ねた結果、なんとかグノーシアを見つけ出すことに成功するが、その直後時間のループが発生し、最初の議論の場面に戻ってしまう。
しかもループするごとに役割や乗員の数が変動していく。
なぜループしてしまうのか、そしてグノーシアとは何者なのか。
主人公は同じく時間のループに気づいているセツとともに、状況打開に向けて動き出すのであった。
本作の特徴
ちょくちょく「ホスキー」という名前が出てきますが、これは当ブログの管理人である自分のことなのであらかじめご了承ください。
SF×人狼ゲーム
本作は、平たく言うと宇宙船を舞台にした人狼ゲームになっている。
それにループというギミックを加え、クリアするまで繰り返しゲームが続いていく。
大まかな設定としては、
・科学技術が発達した遥か未来
・様々な惑星の種族が存在する
・宇宙船にグノーシアという生命体が侵入しており、人間の姿をとりつつ乗員を襲っている
・グノーシアを確認した宇宙船は、宇宙船を管理するAIによって速やかに自爆ないし武力制圧による汚染浄化が求められるが、基本的にはそれを留保してもらう代わりに乗員達の手によってグノーシアを見つけ出すという穏便な手段がとられている
という下地があり、これによって人狼ゲーム風の議論が行われるという体裁をとる。
また、プレイヤー以外は全てCPUであり、1人プレイで人狼ゲームが楽しむことが可能。
1ゲームの所要時間も10~20分程度とお手軽。
ただし、ゲームを持ち寄っての対戦・協力プレイはできない。
基本ルール
ルールは大きくまとめると以下の5つ。
・1日に1回議論を行い、グノーシアと思われる人間(1~6名)を一人投票で選出しコールドスリープさせる
・議論が終わり夜になるとグノーシアのみ行動が可能になり、一晩に一人だけ乗員を消滅(殺害)させる
・これらを繰り返し、全てのグノーシアをコールドスリープさせれば乗員側の勝利、乗員とグノーシアの数が同等になればグノーシアの勝利となる
・変則ルールとして、バグの役割を持った人間が最後まで残った場合、強制的にバグが勝利する(後述)
・乗員にはそれぞれ役割が決められている(後述)
以上のように、基本的には人狼ゲームと同じスタイル。
また、議論内容は簡潔ではあるがいつでも振り返ることが可能。
役割
ゲームごとに乗員には決められた役割がある。
詳細は以下の通り。
※()で書かれた部分は人狼ゲームにおける役割を指す
乗員(村人)
・特殊能力を一切持たない人間
・団結できれば数でグノーシアを追い詰められる
エンジニア(占い師)
・1日1回特定の人間を調べることができ、グノーシアか否かを判別可能
・バグを調べた場合、消滅させることができる
ドクター(霊媒師)
・コールドスリープされた人間がグノーシアか否かを判別可能
守護天使(狩人)
・1日1名だけ特定の人間をグノーシアから守ることができる
・ただし自分自身を守ることはできない
留守番(共有者)
・乗員側の役割としては唯一2名存在
・固有の能力はないが、留守番はお互いを留守番だと証明できる
グノーシア(人狼)
・1日1回乗員を消滅させることができる
・グノーシアは互いの正体が分かっている
・人数はゲーム毎に変化(最小1名、最大6名)
・嘘をつくことが可能
AC主義者(狂人)
・正式名称は「アンチコズミック主義者」
・グノーシアを信奉し、グノーシアに味方する乗員
・グノーシア側からは正体が分からず、エンジニアやドクターからは人間と判定される
・グノーシアが勝てば勝利扱いとなる
・嘘をつくことが可能
バグ(妖狐)
・第三勢力
・乗員かグノーシアいずれかの勝敗が決するまで残っていれば、その勝敗に関わらず強制的に勝利となる
・グノーシアに襲われても消滅しないが、エンジニアから調べられると消滅する
・嘘をつくことが可能
これらの役割を勢力ごとにまとめると、
乗員側
乗員、エンジニア、ドクター、守護天使、留守番
グノーシア側
グノーシア、AC主義者
第三勢力
バグ
という構図になる。
このうち乗員側は嘘はつけず、グノーシア側とバグのみ嘘をつくことが可能。
一見乗員側には不利に感じられるが、逆に考えると「嘘をついている=確実に敵」という図式が成り立つため、嘘つきを見つけることがゲーム攻略の鍵となる。
なお、ストーリーが進んでいくと、これらの役割の有無や参加人数を自分で自由に決めることができるようになり、攻略の自由度が増す。
RPGの概念を導入
本作は、この手のゲームでは非常に珍しい経験値やステータス、スキルといったRPG然とした概念が導入されている。
これにより、単なる論理ゲームとしてだけでなく、経験値を稼いでステータスを強化することで自身の発言力を高めたり、隠密性を高めてグノーシアから狙われづらくするなどしてゲームを立ち回りやすくすることが可能。
経験値は勝敗にかかわらず1ゲーム終わるごとに獲得できる
なので人狼ゲームに慣れていない場合でも、数をこなしてレベルを上げていけばいくほど攻略が容易になっていくというバランスになっている。
もちろん、意図的にレベルを上げず自分の力だけでゲームを攻略していくこともできるので、どうプレイするかは人それぞれ。
ステータス
ステータスは以下の6項目が存在。
カリスマ
・発言や行動に関する能力
・高いほど自分の発言に対して同意を得やすくなる
・確実に追い詰めたい相手がいる時に有用
直感
・見破りに関する能力
・高いほど相手の嘘や不審な言動に気づきやすくなる
・嘘に気づいた時には特殊な演出が入る
ロジック
・論理に関する能力
・高いほど周囲を説得しやすくなる
かわいげ
・好感度に関する能力
・高いほど自分に投票されにくくする
演技力
・演技に関する能力
・高いほど自分の嘘を気づかれにくくする
・グノーシアになった時に有用
ステルス
・存在感に関する能力
・高いほど自分の行動に脅威を感じづらくさせ、グノーシアに襲われにくくする
スキルとコマンド
特定のステータスが一定以上になると、特殊なスキルやコマンドを覚えることができる。
これらは全部で30種類存在し、レベルアップで覚えるものやストーリーの進行で覚えるものもあれば、特定のイベントを発生させることで習得できるものもある。
以下その一例。
・名乗り出ろ
カリスマが10になると習得可能。発表されていない役割(留守番は除く)がある時使用すると、その役割を持った乗員を名乗り出させることができる(嘘をつけるグノーシアやバグも名乗り出る可能性がある)。
・絶対に人間だ、絶対に敵だ
ロジックが20になると習得可能。明らかに乗員だと言える者、もしくは確実に敵or嘘をついている者がいる時使用すると正体を見破ることができる。相手がグノーシアの場合は観念して正体を明かす。
・うやむやにする
特定のイベントを発生させることで取得でき、ステルスが25になると習得可能。自分が疑われた時に使用すると、疑いの目をうやむやにして逸らすことができる。
キャラと交流を深めて進めるストーリー
本作のストーリーは、基本的にキャラとの交流を深め、特記事項と呼ばれるキャラ個人のプロフィールや秘密を明らかにすることで進んでいく。
特記事項の解放には条件付きのものもあり、
・目当てのキャラと協力して一定日数or最後まで生き残る
・目当てのキャラが特定の役割の時に共に一定日数生き残る
・特定の役割で最後まで目当てのキャラと生き残る
など、特定のキャラの生存を考慮した上でゲームを生き残らなければならないものがある。
感想
良かった点
ソロプレイで人狼ゲームができる
本作の肝にして最大の魅力。
人狼は多人数とのコミュニケーションを前提としているため、どうしても自分以外の人間がいないと成立が難しいゲームですが、本作ではその問題を見事なまでにクリアしており、ソロプレイで楽しむことができます。
そうなると必然的に他は全てCPUとなり、CPUは人間と違って複雑な思考は無理なんじゃないかと思われますが、これがかなり手ごわいです。
思考ルーチンに一定の傾向はあるものの、キャラごとの能力値に基づいたAIをもって、的確にプレイヤーの嘘や不信な行動を咎めてきます。
特に慣れないうちは、当たり前のように自分の正体を見透かされてやられまくること請け合いです。
ただその分、欺けた時や上手く出し抜いた時、味方同士で連携して相手をハメた時の爽快感は格別。
そういう時のやってやった感はたまらないですね。
疑う時やかばう時などの台詞パターンが少ないのがネックですが、上記のようなAIを搭載しているので、ゲームとしては対人の人狼ゲームと遜色ないプレイ体験ができるでしょう。
ループギミックと人狼ゲームの相性の良さ
ストーリーはゲームが終わる度にループしてしまう原因を探るというのがメインになっていますが、このループというギミックと人狼ゲームとの相性は抜群です。
というのも人狼ゲームは、1ゲームだけでは面白さや奥深さの全てを理解できず、繰り返しプレイすることでその魅力を知っていくタイプのゲームなので、人狼を題材にするとどうしても「反復する必要性」が求められます。
これに対し「ループするストーリー」という明快な答えを用意することで、
Q.なぜ繰り返し人狼ゲームをするのか
A.ストーリーがループものだから
というように、ゲーム性とストーリーの擦り合わせに成功。
結果違和感なく両方の要素が溶け合い、作品の魅力として成立しています。
このあたりのセンスは素晴らしいです。
『レイジングループ』もそうでしたが、やはりループものと人狼ゲームは相性がいいですね。
ちなみに、自分はクリアするまでに162回ループしました。
キャラ付けが上手い
本作に登場するキャラは個性豊かですが、その個性はステータスや容姿に基づいて作られているため、キャラごとの特徴が非常に分かりやすいです。
以下はその一例。
・真面目かつ利他的で、参加者を取りまとめるリーダータイプなキャラ
・享楽的な性格で、疑われてもロジックではなく演技や媚びを売って逃れようとするキャラ
・論理性を重視し、疑う時も疑われる時も理論武装で対応する理屈っぽくて嫌味なキャラ
・論理よりもその時の感情や己の直感を重視する奔放キャラ
・総合スペックは高いが極めて利己的かつ非協力的で、敵としても味方としても要注意なキャラ
以上のような具合でキャラの特徴付けが上手いので、ストーリー上の活躍だけでなくゲーム上ではどのように立ち回ってくるのかという指標にもなり、そういった性格特性が攻略の糸口になることも少なくありませんでした。
悪かった点
自分がやられた時点でゲーム終了
人狼ゲームは、場合によっては自分が犠牲になってでも自軍を守ることが必要になってきますが、本作ではそのようなプレイングは事実上できません。
というのも、自分がやられた時点でそのゲームは終了してしまうためです。
たとえ「自分はやられたけど自軍の勝ちはまだ全然ある」という状況であっても、その後の動向は全てカットでただ「自分が消失した」という結果が出て終了となります。
なので、どうしても保身第一の立ち回りになってしまい、通常の人狼ゲームに比べてプレイングの幅はやや狭くなりがちです。
この点はちょっともやっとするところでしたね。
台詞のパターンが少ない
本作では、「疑う」「かばう」「同意する」などのコマンドを使うと専用の台詞が出ますが、その台詞がどれも1種類ずつしかありません。
なので状況によっては、「あるキャラが(「疑う」しか使わないせいで)さっきから同じ台詞ばかり言ってる」ということが往々にしてあります。
ゲーム的には分かりやすいんですが、会話としてみると不自然というか違和感はすごいです。
そういう感じなので、舌戦とかは期待しない方がいいでしょう。
おわりに
一人で人狼ゲームができるという稀有な作品で、かつクオリティも高く、人狼ゲーム好きには是非ともおすすめしたいゲームです。
じゃあハードルが高いのかというとそんなことはなく、本作はチュートリアルが非常にしっかりしており、最初は1時間ほどかけてじっくり解説を聞きながらプレイしていくことになるので、経験がなくても問題なく楽しめます。
この辺りの配慮は完璧に近いかと。
ゲーム自体は大体25~30時間程度でクリア可能で、クリア後も無限に人狼ゲームをプレイできるので、そういう意味では息も長いと言えるでしょう。
コメント