『夕鬼』クリア後感想 異世界で命がけの人形遊びをするサバイバルホラー/方向音痴は地獄を見ます【ネタバレあり】

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はじめに

ここでは、『夕鬼』をクリアした感想をつらつら書いていきます。

※クリア後の観点から書いているのでネタバレ注意です

本作は、2021年にトライコアから発売されたホラーゲームで、ツンというこの世ならざる存在によって引き起こされる「夕鬼」という遊びに巻き込まれた小学生達を描いた作品となっています。

前日譚にあたる『夕鬼零』から数年後を描いていますが、登場人物はほぼ一新されているため、今作から始めても問題ありません。

ただ、前作をプレイしていれば世界観の理解がより深まるかと思います。

なので余裕があれば前作を触っておいて損はないかと。

ということで早速本題に移っていきます。

ゲーム概要

ストーリー

1990年代のとある田舎町。

この町ではとある噂が小学生達の間でまことしやかに囁かれていた。

その噂というのは、

とある廃病院である儀式をすると、「ツン」という少年の姿をした幽霊が現れ、「夕鬼」と呼ばれる遊びに誘われるらしい

というもの。

その噂を聞き、肝試しの一環として廃病院に忍び込んだミキオ・サエ・ヒロム・ジュン・ユキナ・アイの6人は、ツンに会うための儀式をするも、結局会うことはできず落胆。

何の収穫もなく病院を後にする。

だが次の日、アイの元にツンが出現。

そして「夕鬼しよう」と誘われると、次の瞬間ツンによって作られた夕方の異世界に引き込まれてしまう。

上手く状況を飲み込めない中、なんとか夕鬼に勝利したアイだったが、それで事は終わらず次の日もその次の日もツンが現れ・・・。

基本設定

夕鬼

ツンが考案した遊び。

誘われた人間はツンが生み出した異世界に飲み込まれ、その世界のどこかにある人形を見つけ出し、先に燃やした方が勝ち。

というのが基本ルール。

また、異世界にはツンの他にも黒い人型をした不気味な存在がおり、こちらを見つけると攻撃してくる。

そのため、ツンやそういった存在をかわしながら目的を達成しなければならない。

ツン

小学校低学年ぐらいの少年の姿をした幽霊。

生前は、現在廃病院となっている病院に入院していたらしく、そこで同級生のお見舞いを待ちながら亡くなったという。

そして廃病院にやって来る子供を見つけては夕鬼に誘っている。

誘われた側からすれば傍迷惑な話だが、本人はただ純粋に遊んで欲しいだけであり、そこに悪意はない。

登場人物

主要キャラは全員小学5年生。

アイ

本作の主人公。

内向的な性格で、学校内では全く喋ることができず、鬱屈した日々を過ごしている。

母子家庭であり、家を留守にしがちな母親とはあまり上手くいっていない。

ミキオに半ば強引にグループに引き入れられ、今回の出来事に巻き込まれた。

ヒロム

せっかちな男の子。

周囲の気を引くために無茶をしがちで、いつも生傷が絶えない。

共働きの両親と足の不自由な祖父の4人で暮らしており、両親が不在の間は彼が面倒を見ている。

サエ

数年前に関西から引っ越してきた女の子。

男の子に混じって遊ぶ活発な性格。

両親を事故で亡くしており、現在は叔母夫婦の家に暮らしている。

ミキオ

ガキ大将的な存在。

学校でふさぎ込んでいるアイを自分のグループに引き込んだ。

地元の有力者の家の生まれであり、人望の厚かった祖父を尊敬している。

ジュン

中性的な男の子。

気配り上手で男女共に人気が高い。

だが一方で、中性的な容姿を姉達から馬鹿にされており、内心かなりコンプレックスに思っている。

そういった経緯から男らしさに強い憧れを抱く。

ユキナ

細身で小柄な女の子。

承認欲求が一際強く、他人からどう思われているかを常に気にしている。

いい子を演じるため、気遣うふりをして何かとアイに付きまとう。

姉が一人いるが、この姉が前作に登場したナミ。

姉とは違い、両親から溺愛されている。

ナミ
前作のメインキャラ。今作では名前だけ登場。数年前、とあることがきっかけで同級生の男子と共に夕鬼に巻き込まれる。その過程でかねてからおぼろげに抱いていた違和感―自分の性の不一致を自覚。その後それが原因で両親と喧嘩し、現在は家を出て暮らしている。

本作の特徴

異世界からの脱出を目指すサバイバルホラー

本作は、「夕鬼」というツンによって引き起こされた「遊び」をクリアし脱出を目指す一人称視点のサバイバルホラーとなっている。

舞台は夕方が支配する異世界で、学校・病院・座敷がないまぜになっているというなかなかにカオスな空間。

そこにある人形を探し出し、燃やして勝利することを目指すのがこのゲームの目的。

二つのパートを生き残る

本作では全部で5つのステージが存在するが、それぞれのステージには大きく分けて前半後半の二つのパートが存在する

前半は探索パート。

これは文字通り探索して人形を見つけるパート。

敵の目を掻い潜りながら人形のもとへ向かう。

鍵のかかったドアを開けるために鍵を探すことも多い

そして人形を見つけると後半の鬼ごっこパートに移行。

鬼ごっこパートでは、来た道を引き返し、スタート地点にある火鉢で人形を燃やすことを目指す。

このパートにのみ専用の敵(後述)が出現する。

敵の攻撃から身を守りつつ無事人形を燃やすことができればゲームクリア。

次の章に進む。

スタート地点にある火鉢で人形を燃やす

反撃手段が一切ないタイプのゲーム

主人公は特殊な力のない小学5年生の普通の女の子。

そのため敵に対して反撃することはできず、全編を通して逃げたり隠れたりしながら進めていかなければならない。

主人公ができることは

・息を止める&深呼吸
・しゃがむ
・隠れる
・走る

というごく基本的な行動のみ。

本作は聴覚に優れた敵が多く、敵の前で息をしていると見つかりやすいため、呼吸を止めなければならないシーンは多い。

この時当然肺活量には限界があり(ゲーム中では専用ゲージが存在)、息を止めすぎると息切れを起こしてしまい、それを察知した敵が飛んできてしまう。

また、深呼吸をすると肺活量の回復が早まるが、これも息切れ同様大きい呼吸音を発してしまい、敵に見つかりやすい。

ゲーム中は適切に呼吸と肺活量を管理することが求められる

様々な敵

異世界には人ならざる存在もおり、夕鬼中はツンをはじめとする様々な敵が立ちはだかる。

影人間

一番数が多い敵。

視覚がない代わりに聴覚が発達している。

こちらの足音や呼吸音を察知すると、独自の叫び声を用いてアレを引き寄せる。

直接的な攻撃能力はない。

また、前述の通り視覚がなくその上実体もないため、息を止めて移動すればすり抜けることが可能。

アレ

見た目は影人間に近いが実体があり、頭部付近が赤く光っている敵。

聴覚がほとんどない代わりに視覚が発達している。

※ただし、影人間の叫び声やガラス片を踏んだ時の高い音などは察知する

こちらを見つけると高速で接近し攻撃を仕掛けてくる。

この時一定時間内に2回攻撃を受けるとゲームオーバー。

ちなみに、鬼ごっこパートでは登場しない。

ツン

夕鬼を仕掛けてきた張本人。

聴覚が発達しており、視覚もある程度有している。

影人間と同様に直接的な攻撃能力はないものの、こちらを見つけると足止めをしつつアレを引き寄せるため、影人間よりも脅威。

目玉の化け物

鬼ごっこパートにのみ登場する敵。事実上のボス

視覚と聴覚両方を有している上に追跡能力が非常に高く、執拗にこちらを追ってくる。

接触した時点でゲームオーバー。

感想

良かった点

コンセプトが終始一貫しているホラー

本作は「反撃手段一切なしの逃げることしかできないタイプのホラー」ですが、このコンセプトは最初から最後まで一貫しています。

なんか途中から変な力に目覚めるor霊的なアイテムを入手して敵に対抗できるようになるとかは一切ありません。

どんな敵であっても最後まで脅威です。

ボリューム自体はそこまで多くないものの、こういうブレのなさ故にクリア後はしっかりとした達成感と満足感がありました

下手に脱線してでもボリュームを確保しようとするよりは、ボリュームが少なくてもこうやって趣旨を貫徹した方がいいなと改めて思いましたね。

表と裏で完成するストーリー

ストーリーは表と裏に分かれています。

基本的な内容はどちらもほとんど変わりませんが、表では分からなかった登場人物達の心情や境遇が裏で登場するアーカイブを集めることで分かるようになっており、表裏両方やって完成する物語です。

ゲーム部分はぶっちゃけ同じことの繰り返しではあるんですが、裏側を見ると「そういう事情があったのか」とか「この子なりに色々考えてたんだな」というのが明らかになるので、繰り返しといってもそこまで苦ではありませんでしたね。

トロコンが簡単

トロコンは簡単な部類です。

エンディングを全て見れば可能な塩梅になっています。

表5ステージと裏5ステージの全10ステージクリアする必要こそありますが、裏はアーカイブ収集と新しい敵が1種類追加される以外は表と変わりません。

※アーカイブはトロコン条件には含まれないものの、全部取らないとステージクリアできないため収集必須です

なので表よりも早い時間で攻略可能で、全部こなしても8~9時間程度でトロコンまで持っていけるでしょう。

ちなみに、裏で追加される敵は巨大な人形の頭部。

特定の地点に近づくと突如上から出現し、一直線に移動した後消えるという謎の挙動をとります。

この時接触してしまうと、数秒間プレイヤーにしがみつきながらおぞましい叫び声を発し、アレを引き寄せるというかなりうざったい上に怖い敵です。

悪かった点

バグが多い

プレイ中の体感として、バグは多いように感じました。

自分が遭遇したのは、

・リトライ時、ロード画面からゲーム画面に遷移しない(3回遭遇)

・鬼ごっこ中に部屋を抜けたらバグった世界に出てしまう

・アレから逃げようとしても動けず、アレも攻撃してこない

といったもの。

1、2時間に一回は何かしらのバグがあったなと。

特にロード画面で動かなくなるのは割とげんなりでした。

ps5版は分かりませんが、ps4版だとリトライ時のロードがただでさえ長いので・・・。

そういう意味ではトライアンドエラーがちょっとしんどかったです。

あとこれはバグではありませんが、場所によってはかなりカクつくポイントがあり、オフラインゲーなのにラグを疑うレベルで操作が遅くなる事態にも何度か遭遇しました。

なので、ゲーム周りはお世辞にも快適とは言えなかったですね。

この辺はアプデで良くなっていくとは思いますが。

ただ、バグのおかげでいいスクショも撮れたりしたので、まぁ悪いことばかりではなかったです。

バグのおかげでいい画が撮れました

方向音痴にはシビアなゲーム

本作はどのステージも似たような景色が多く(というより使い回しが結構あります)、マップもないため迷いやすいです。

特に3章以降はステージ自体が長くなる上に急にマップが入り組み始め、敵の数もそれなりに増えてくるのでなかなかきつくなっていきます。

方向音痴の自分にとっては非常にシビアなゲームでした。

とりわけ鬼ごっこパートの座敷とか完全に地獄でしたね。何回やり直したか分かりません。

行きは開けられた襖が帰りは閉められてたとかも普通にあって随分苦しめられました。

まぁ楽しめたことには楽しめたんですけどね。

ただもう一度やりたいかと言われれば「絶対にノゥ!!!」です。ほんと大変でした。

根気強くいかないとしんどいタイプの作品なので、その点で人を選ぶなぁと。

気になる部分がチラホラある設定&ストーリー

ストーリーや設定周りはちょいちょい気になる所があります。

まず設定とゲーム部分の擦り合わせの甘さ

設定だと夕鬼は、ツンと夕鬼に巻き込まれた側(主人公)のどちらが先に人形を見つけて燃やすかを競う遊びなんですが、ゲームだとツンは人形を一切探しません

ひたすらこちらを探し回ることしかせず、事実上影人間やアレなどと同じく単なる敵の一人でしかないです。

厳密にはツンも夕鬼の参加者の一人なのに、ゲームでは単なるエネミー扱いなのはいささか違和感がありました。

また、ストーリーだと夕鬼に巻き込まれたのは6人なんですが、実際に夕鬼に参加させられるのは主人公だけというのも謎でした。

一応、「主人公がおばあちゃんにもらったお守りが関係している」という理由こそ語られますが、それ以上深く突っ込まれることはありません。

突っ込まないのはいいとしても、それを考察するための材料も一切与えられないので、ただただ消化不良だったなと。

もうちょっと説得的な理由付けが欲しかったですね。

あとキャラ描写の極端な格差。これもいただけなかった。

メインの登場人物は6人おり、作中ではこの6人を中心にストーリーが展開されていくものの、物語にガッツリ絡むのは

・主人公のアイ
・気配り上手でシンプルにいい奴のジュン
・承認欲求モンスターのユキナ

の3人だけです。

残りの3人(ヒロム、サエ、ミキオ)に関してはほとんど出番がありません。

主人公ら3人をメインに物語が進む一方、残り3人は人となりがあんまり分からないうちに夕鬼のせいで発狂してフェードアウトして終わりです。

その後のフォローとかはほぼなく、助けることもできません。

この差はいかんともしがたいものがありました。

まぁ一応裏編でアーカイブを集める中で、「このキャラ(発狂した3人)は実はこんなこと考えてたんだよー」ということが明らかになるんですが、なるほどとは思いつつもそこまで感情移入できませんでしたね

登場人物を持て余している感は否めなかったです。

前作にあたる『夕鬼:零』は、メインキャラ3人で話が進み、そのうち一人が発狂という流れでしたが、3人ともしっかりキャラが立ってただけに劣化してるなぁと思わずにはいられませんでした。

おわりに

以上、『夕鬼』のクリア後レビューでした。

前作のVRチックなサウンドノベルから一転、一人称視点のサバイバルホラーとなりましたが、なんとか上手く路線変更できていたのではないかと思います。

が、ストーリーはともかくゲームとしては目新しいプレイ体験はありません

どこかで見たorやったことあるようなタイプのゲーム性です。

個人的な感想を言うなら、前作独自の要素を捨てて良く言えばオーソドックス悪く言えば凡庸なホラーゲームになってしまってるなという感じでした。

尖った強みが見受けられなかったのは残念。

ただ、商業的な面で見ると前作よりこっちの方がウケはいいとは思います。

ノベルゲーはただでさえ厳しいですしねこのご時世。

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