はじめに
ここでは、『ワールズエンドクラブ』をクリアした感想をつらつら書いていきます。
※クリア後の観点から書いているのでネタバレ注意です
ほんと一切自重していないのでご注意ください。
本作は2021年にイザナギゲームズから発売されたゲームで、12人の少年少女が東京を目指して旅をするというアクションアドベンチャーとなっています。
ディレクターにダンガンロンパシリーズで有名な小高和剛さん、シナリオに極限脱出シリーズを手掛けた打越鋼太郎さんを据えたゲームですが、コロコロコミックでメディア展開されているということもあり、テイストはなかなかの子供向け。
なので暖かい目で見ながらプレイすることが推奨されます。
が、そういう目で見ても粗や不満点がかなり多く・・・。
詳しくは感想の方で。
ゲーム概要
ストーリー
1995年、日本。
東京のとある小学校に、全国から落ちこぼれの集団として集められた「ガンバレ組」というクラスがあった。
特殊な事情で成り立っているクラスではあったがクラスメイト同士の結束は強く、その仲は極めて良好であった。
だが、同年の7月13日。
修学旅行で鎌倉へと向かう途中、ガンバレ組の乗っていたバスが遠くの街に落ちた隕石の衝撃で横転。
一行はそこで気を失ってしまう。
そして目覚めると、辺りは見たこともない場所。
調べると海底遊園地という文字通り海の底にある遊園地にいることに気づく。
状況が飲み込めず混乱していると、一行の前にピエロピというピエロのような謎の存在が現れる。
ピエロピは
「君達にはこれからデスゲームをしてもらう」
と告げ、有無を言わさずデスゲームを強行。
「死にたくない」という思いに駆られ正気を失った面々は、成されるがままデスゲームの闇に飲み込まれていく。
しかし、れいちょというリーダー格の少年が奔走した結果、なんとか犠牲者を出さずデスゲームを終わらせ、ピエロピに反逆。
その後紆余曲折ありながらも、なんとか海底から脱出することに成功する。
だが、陸に上がるとそこは鹿児島。
そして空にはXの形をした謎の物体が。
自分達の身に何が起こったのか?日本はどうなってしまったのか?
置かれた状況に戸惑いながらもれいちょ達ガンバレ組は、東京に帰るため動き始めるのであった。
本作の特徴
少年少女達のロードムービーなストーリー
本作は、12人の少年少女達が鹿児島から東京までのおよそ1200kmを、紆余曲折ありながらも力を合わせて進んでいくというロードムービーのようなストーリーとなっている。
主に西日本中心だが日本各地を旅し、12人はその道中で様々な経験をしていく。
人類が忽然と姿を消しており、雑草が建物を覆う程度には荒廃しているなど異様な状況ではあるが、子供達の冒険の旅というテイストが強めのため、ゲーム全体の雰囲気は意外と明るい。
また、ストーリーもダンロンや極限脱出のスタッフが関わっているにしては不自然なほど爽やかでシンプルな内容なので、いい意味でも悪い意味でも人を選ぶだろう。
が、明るいながらも不穏な情報や描写が見え隠れするので、そこは小高氏/打越氏らしいか。
横スクロールアクション
本作は物語が進行するシナリオパートと、実際にキャラクターを操作するアクションパートの2つに分かれている。
アクションパートは横スクロール型のステージを進んでいくスタイルとなっており、道中に存在する敵やトラップを排除しつつステージクリアを目指す。
また、難易度自体はそこまで高くはないが、アクションパートはHPという概念がないため、何か攻撃を一発もらうとゲームオーバー。
敵に接触しただけでもアウトとかなりの紙装甲。
初見殺しステージもちらほらあり、全体的に死んで覚えるゲームデザインとなっている。
それぞれが持つ固有能力
物語が進んでいくと、ガンバレ組のメンバーはそれぞれ固有の能力が覚醒していき、アクションパートではこれを駆使して攻略していくことになる。
例えばれいちょは、一球入魂という能力が覚醒。
投擲能力が強化され、物体を遠くまで投げることができる。
本作では一番出番が多い上に扱いやすく、汎用性に優れる。
他にも自身の身体を鋼鉄化する無敵鉄人、カラムーチョを食べることで口から火を出すことができる火吹乙女、周囲に無敵のバリアを展開する無敵張円、重力方向を操作して天井への移動を可能にする天地反転など、個性豊かな能力が登場する。
感想
良かった点
キャラデザとモデリングの良さ
本作のキャラデザは竹さんという方が担当されており、イラストがゲームの雰囲気にしっかりマッチしていて秀逸です。
変態チックな書き方になりますが、男女問わず小学生特有の丸みを帯びた体型が良く表現されていて、奇抜さの中にもリアリティを感じさせます。
あと兄貴以外の男子が女子より小さいのも地味にリアル。なお自分はロリコンでもショタコンでもありません
また、モデリングもイラストを忠実に再現しており、陳腐な言い回しですがイラストをそのまま3Dに落とし込んだと言っていいぐらいしっかりできています。
イラストと実際に喋ってるキャラのグラフィックが絶妙に乖離していて違和感を拭えないことってあったりしますが、このゲームにおいては無用の心配でした。
高画質というわけではないものの、この部分のクオリティは高いですね。
悪趣味さがほとんどない
本作はダンガンロンパと極限脱出のクリエイター達によって作られたゲームということもあり、なんとなく身構えつつのプレイでしたが、両シリーズに頻発するような悪趣味な演出や表現はほとんど見受けられませんでした。
対象年齢に配慮しているためか、そういったのはかなり抑えめです。
「君達こういうの好きなんでしょ?」と言わんばかりの過度なグロ表現やらキャラ同士の陰湿な応酬はなく、また、プレイヤーの予想を裏切ることに躍起になって空回りしているということもありません。
全体的に明るく爽やかなテイストに仕上がっていると思います。自分が麻痺してるだけかもしれませんが
あるとすれば、打越さん特有のしょうもない下ネタが多い程度でしょうか(チン〇にまつわる系のネタがやたら豊富)。
そういう意味では、癖はそこまで強くないかなという印象です。
まぁだからと言って万人に薦められるようなゲームではありませんが・・・。
悪かった点
ツッコミどころ満載のストーリー
一番残念だった点。
ストーリーは率直に言ってツッコミどころのオンパレードです。次から次へと出てきます。
ただ全てを書き出すとキリがないので、個人的に特に気になった部分をいくつか。
ツッコミポイントその1.デスゲームが行われた理由
まず出だしに始まるデスゲーム。
実はこれ、とあるキャラがガンバレ組の面々に施された洗脳を解くために用意したゲームで、実際殺し合わせる気は微塵もなかったことが後に明らかになります。
じゃあなぜデスゲームという体裁をとったかと言うと、「施された洗脳は生命の危機が極限まで高まると解除されるようプログラムされていた」から。
要は洗脳を解くためにこういう仕掛けを用意したんですね。
でもそれってつまり、生命の危機を感じさせられるのなら、別にデスゲームでなくてもよかったわけで・・・。
まぁなんというか回りくどいですよね。
デスゲームなんて大がかりな仕掛けを用意している暇があったら、何かしらの敵を作って襲わせる方が手っ取り早いと思うんですが。
ってかそもそも洗脳を解くためとは言え、小学生が「みんなにデスゲームをしてもらおう」って思いついて実行に移すのがホラー。バトロワかな?
ただメタ的に見れば、これは製作側のファンサービスというか「一応そういう要素もあるよ!」っていうことを喧伝するために必要ではあります。
それを一番楽しみにしていた方にとってはかなりの肩透かしを食らうと思いますが。
ただ正直、個人的にはこのデスゲーム要素が一番面白かったので、ゲーム的には浮いてはいますがあってよかったなと。
ツッコミポイントその2.京都でのイベント
中盤ではルート分岐があり、大阪に行くか京都に行くかで物語が変化します。
その京都ルートでの出来事。
京都に行くと、生存者達が暮らす地下空間を発見するんですが、ここであるキャラが感染症になり(京都に赴く前にネズミに噛まれていた)、抗生物質が必要になります。
仲間達は急いで地上へと探しに出るものの、実は地下には医療施設があってそこに抗生物質があることが分かり、”とある理由”でまだ地上に出てなかったメンバーがそれを受け取って地上の仲間と合流するという展開に。
このくだりはこのゲームで一番ツッコミたいところでした。
いや地上出る前にまずは地下を探せよと。
人が住んでるんだからどこかに医療物資ぐらいあってもおかしくないだろ。
というかそもそも生存者に話聞けよ。
生存者とは特に敵対してるわけでもないんだから物資があるかどうかぐらい教えてくれるだろと。
一応フォローしておくと、「西の方に病院があった(と思う)からそこに行こう」という流れになるので外に出る展開になるのは分かるんですが、それにしたって12人もいるんだし地上と地下で手分けした方がよくない・・・?
他だとこういう時は手分けしてるのに、ここはなぜか集団行動なので余計そう思ってしまいましたね。
あと、”とある理由”で地上に出てなかったメンバー(以下ジェンヌ)がいると書きましたが、ここはツッコミどころ通り越して意味不明でした。
詳細は書くと長くなるので端折りますが、
①ジェンヌ、とある生存者の男性に対して突然「お前は姉を殺した犯人だ!」と糾弾
②男性、それを否定せず
③突如地震が発生。男性が地割れに巻き込まれる
④ジェンヌ「いいザマだ。お前なんか、お前なんか・・・うわああああ」
⑤能力覚醒
大体こんな感じ。
シンプルに意味が分かりませんでした。何これ。
詳しく知りたい方は申し訳ありませんが、各自ググってみてください。
ツッコミポイントその3.身近な大人をほとんど気にかけないガンバレ組
ガンバレ組の主目的は「東京に帰ること」ではありますが、その目的に邁進している割に帰る場所にいるであろう大人(親や学校の先生)を気に掛ける描写が極めて希薄です。
全くないわけではないんですが、小学生にとって身近な大人の存在はそれなりに大きいはずなのに、明らかにそういった人達への思慕の描写が少なすぎます。
なんで東京に帰りたいかって、そういう人達がいるからというのも理由の一つだと思うんですが。
ちゃんと親のことを気に掛けてたのはニョロぐらいですし。
せめて修学旅行を引率してくれた担任のことぐらいはもっと想って差し上げろ。一緒にバス乗ってたんだから。
まぁ確かに「頼れるのは自分達だけだから泣き言なんて言ってられない」という状況ではありますが、それにしたってちょっと逞し過ぎるかなという印象を受けました。
なんならホームシックに陥るイベントがあってもよかった。
そんな感じなので、プレイ中は邪推し過ぎて「あ、これまだ洗脳解けてないことの伏線なんじゃ・・・」とか思ってましたね。
ツッコミポイントその4.展開がワンパターン
これは特定の部分ではなくストーリー全般に言えること。
このゲーム、展開が基本ワンパターンです。
例えば能力が覚醒するという重要イベントも、
①仲間が死んじゃう!助けないと!
②能力覚醒
③無事助ける
がほとんどで、流れ的には王道だけどあまり燃えません。またそれか・・・という感じ。
ただしこれは「能力に目覚めるには自己犠牲の精神が最大まで高まる必要がある」という条件があるため、多少仕方ない部分ではあります。
設定がちょっと悪かったですね。
ただ、大して掘り下げがないまま覚醒するキャラが多かったのはちょっといただけませんが。
覚醒フラグもとってつけたようなものがほとんどだし。
あと、終盤はワンパターン過ぎてちょっとくどいです。
①自分は仲間に相応しくない・・・
②違う!〇〇はガンバレ組の仲間だよ!
③みんなぁ・・・!
これが短いスパンで実質3セットあります。胸やけ起こすわ。
他に気になったポイント
他にも色々あるんですが、これ以上長々書くのもあれなので他の気になった部分は箇条書きに留めます。
・教祖は結局何者だったのか
・教祖が言ってた儀式って何
・終盤のポチいじめ→ポチ賛辞の異様さ
・ニョロの父親ってどこにいたの
・ガンバレ組の保護者や担任の生死
・れいちょとポチはバニラが見えてたのに雪には見えなかった理由
・発声機能がないはずのれいちょが喋れるようになったのは流石にご都合過ぎでは?(人格が芽生えたのは熱いけど)
・90年代にアンドロイド作製&ナノマシン実用化とかラスボスすごすぎ
・ガンバレ組の後に続く羊飼いが堕落しないとは限らないんですが・・・
面白みのないアクションパート
本作はシナリオパートと、横スクロールのステージを攻略していくアクションパートの2つに分かれていますが、アクションパートはちょっと思うところが多いです。
まず単純にテンポが悪い。
少し進んではイベント、また少し進んではイベントの繰り返しでだれます。攻略中はもっと自由にさせてほしかった。
また、操作キャラはこちらで決められず、ステージ毎に決められた3人が一緒に行動することになりますが、3人を自由に操作することはできません。
特定のポイントに着いたら強制的に操作キャラが切り替わるという仕様になっています。
そのため、ギミックによって操作キャラを交代しながら攻略していくという楽しみ方は一切できません。
パズルアクションを謳っているにしては、こういう制限は如何なものでしょうか。
このせいで解くというより「解かされている」感じが非常に強い。
あと、前述の通り3人一緒に行動すると書きましたが、動かさないキャラは特にサポートに回ることはなく(極一部のステージを除く)、文字通り「ただついてくるだけ」です。
なので道中では、操作キャラ以外は「ここで見てるから頑張って」「じゃああっちに避難しとくからあとはよろしく」と言うだけで協力のきの字もありません。
いやまぁギミック毎にキャラが入れ替わりながら先に進んでいくので、広義の意味では協力していると言えますが、肝心の「入れ替え操作」をプレイヤーができないため、イマイチ協力感がないのが残念でした。
「みんなで力を合わせて東京に帰る」というストーリーラインを今一つゲームに落とし込めてない印象が強かったです。
という具合に、アクションパートに関しては改善してほしいポイントが多く、正直面白いとは思えませんでしたね。
なお、テイストが死に覚えゲーな点に関しては、自分はそういうゲームが結構好きなのであんまり悪い印象はありません。
まぁ出来自体は決して褒められたものじゃありませんが・・・。
不便なUI
UI面は不便さが目立ちます。
まずノベルゲームの側面が強いにもかかわらず、バックログの閲覧や文字送りオートなどがメニュー画面からでしかできません。
特にバックログに関してはただただ不便で、ワンボタンで気軽に見れないというのはシンプル使い勝手が悪いです。
メニュー→コレクション→会話の記録(バックログ)というように地味に遷移が多いのもだるい。
バックログ自体はかなり前まで遡れるだけにもったいないです。
また、文字送りのオートについては、音声が途中でぶつ切りになるので、台詞を聞き終わらないうちから次の台詞に移行するという尻切れトンボっぷり。
ボイス垂れ流しで聞きたい人にとっては間違いなくマイナスポイントでしょう。これに関してはアプデで改善されるとは思いますが。
ちょいちょいある不具合
プレイ環境にもよるかもしれませんが、不具合はちょくちょく遭遇します。
自分の場合、強制終了が2回、進行不能が1回ありました。
特に強制終了は心臓に悪いです。ゲーム的にもハード的にも。ボスでぶち当たったらたまったもんじゃないし。
なので自衛のため、1時間ごとに一旦ソフトを再起動するという方法をとっていました。
これに効果があったかは分かりませんが、それ以降不具合に遭遇することは一度もなかったので、まぁやらないよりはマシだったんでしょうね多分。
この辺もアプデでなんとかなりそうな部分なので、本作を気になっている方はアプデ来てからでも遅くはないのかなと。
おわりに
以上、『ワールズエンドクラブ』のクリア後レビューでした。
このゲーム別に滅茶苦茶嫌いというわけではないんですが、ツッコミどころを書いてるうちになんかヒートアップしてきて、最終的にくどくどと酷評した記事になってしまいました。
一言でまとめるなら「キャラかストーリーどちらかを好きになれないとしんどいゲーム」だと思います。それぐらい荒削りな部分が多すぎる。
なのでとてもじゃないですが人には薦められません。
もしかして開発スケジュールに余裕がなかったんですかね?ちゃんとテストプレイしたか怪しい部分もありますし。
あと、本作のボリュームは大体10時間程度でクリア可能と少なめですが、個人的にはちょうどよかったです。
これで東日本にも行こうって展開だったら間違いなく投げてた自信があるので。
コメント
ついさっきクリアしたのですが、自分も同じ感想ですね。
あの二人が作った割にはストーリーが稚拙、というか、二人が今まで作ったゲームから再利用した感じですね。「新しく作るの面倒だからこれでええだろ」って風に感じ取れました。
アクションもひどい出来でしたね、ザンキゼロという前科があるため期待はしてませんでしたがそれでもひどかった。
今後何らかの追加要素があったとしても(そんなのないと思うけど)評価は変わらないんじゃないでしょうかねこれ。
あと個人的に気になった要素が
・一部の敵は幻って言ってたけど、幻にやられて死亡って何?幻に紛れて機械に攻撃されたとか?
・洗脳の後処理が雑。(設定的には能力目覚めさせる手術の副作用だったはず)「自己犠牲が云々で能力に目覚める」なのに「他人を犠牲にして自分だけ生き残る」行動になった洗脳手術を放置して何かあったらどうするのか。
・「異界人=プレイヤー」って設定のはずなのに、自分が直接介入してなかったりよくわからないことが多い。(にぃやんへの指示とか修学旅行前のポチとの会話とか)BWと同じ設定ならわかるけど、下手にアクション要素があるせいでそれも違和感がある。
・会話のフラグ管理?がしっかりしてない。(大阪編進んでしばらくすると「ガンバレ組は感情が消えない子供たちが集められた組だから云々」という初情報がでて「え?そんな設定あるの?」って感じだった。おそらく京都編でこの情報が出るので本来はこっちの予定で、ごちゃごちゃになった結果なんだと思う)