はじめに
ここでは、『神田アリス も 推理スル』をクリアした感想をつらつら書いていきます。
本作は2021年にel diaから発売されたゲームで、とある女子高を舞台に展開される高校生達の人間模様を描いたテキストADVとなっています。
なお、最初にことわっておきたいんですが、自分は百合ゲーもしくは百合ゲーに分類されるゲームをプレイするのはこれが初なので、その道のファンの方からすればムッとするようなことも書いております。
その点は何卒ご容赦ください。
ゲーム概要
ストーリー
御幸森女学院高等学校。
1年生の神田アリスは、とある出来事がきっかけで濡れ衣を着せられた親友を助けるため、茶道部の魔女と噂される2年生の佐和良義宝珠のもとへ向かう。
佐和良義は生徒が抱える様々な悩みを解決してくれると評判で、アリスの頼みを引き受けると無事これを解決。
その一件が縁となり、親友ともども佐和良義と親しくなっていく。
これはそんな彼女達の人間模様を描いた物語。
本作の特徴
サウンドノベル寄りのテキストアドベンチャー
本作はテキストを読み進めるのがメインのアドベンチャーとなっている。
が、従来のアドベンチャーのように自由に動き回ったり色んな人に話しかけたりといったことはできない。
プレイヤーが能動的にできるのは選択肢を選ぶことのみであり、どちらかと言えばサウンドノベルの趣が強め。
そのため、こちら側がゲームに介入できる余地は少なく、プレイヤーというより読み手のスタンスが求められる。
選択肢とエンディング
選択肢を選ぶ機会は大きく分けて通常会話と推理パートの2つ。
通常会話での選択肢はストーリーを読み進めていると発生。
どれを選んでもストーリーは進行するが、選んだものによって会話内容がやや変化する。ただし話の大筋は変わらない。
推理パートは文字通り推理をする時に発生。
本作では事件や謎を解くために主人公のアリス視点で答えを考える場面が時折あり、その際適切な選択肢を選べれば物語が進展。
間違ってしまうとゲームオーバー。バッドエンドに到達する。
以上のように、この手のゲームではオーソドックスなシステムとなっている。
なお、通常会話で発生する選択肢はどれを選んでもゲームオーバーにはならないが、厳密には正解/不正解があり、全てにおいてベストな選択肢を選べていればトゥルーエンドに、一つでも選べていなければノーマルエンドに移行する。
百合要素7~8割・推理要素2~3割
タイトルでも「推理スル」とあるように、本作は推理要素も含まれているが、ゲーム内において推理する場面は少なめ。
どちらかと言えば百合ゲーとしての側面が強く、「百合×推理」ではなく「百合ゲーの中にフレーバーとして推理要素がある」というテイストになっている。
そのため本格的な推理というのは残念ながらない。
反面、百合成分は(初心者目線で見ると)濃厚なので、そういったゲームを探しているならおすすめ。
ミスマッチを防ぐためにもこの点は留意した方がいいだろう。
感想
良かった点
美麗なイラスト/流麗なBGM
キャラや背景を含め、イラスト全般は非常に綺麗です。なんというか透明感があります。
女の子がメインのゲームなので当然みんなかわいく、系統が被らないようになっているので没個性的なキャラはいません。それぞれにそれぞれの良さがあるのが◎。
かく言う自分も上のジャージ着ているアリスのイラストにちょっと惹かれてこのゲーム買ったところはあります。
ただそのイラストが使われたシーンには少し「えっ?」ってなりましたが・・・。これが百合ゲーか
また、BGMは全てピアノメインで清らかな感じ。ゆったりしていてどこか儚さのある曲が多いです。
本編内での季節は秋から初冬にかけてなので、雰囲気的にもピッタリだなと。
配慮が行き届いたUI
本作のUIは全体的にかなり良好です。
パッと思いつくものだけでも、
・バックログでかなり前の場面まで遡れる
・前後の選択肢の行き来がワンボタンででき、やり直しがしやすい
・ロードがほぼない(一部やや暗転がある程度)
・通常のセーブスロットとクイックセーブのスロットがそれぞれ100個ずつある
などストレスを感じさせる部分がなく、とにかく快適でした。
また、コンフィグでいじれる部分が多く、文字のフォントやスキップ全般の設定、BGMやSEの音量調節からキャラクターボイスの個別ON/OFFまで、かなりきめ細かく設定できます。
これ以外にもいじれる箇所はあります。というかこのゲームでいじれない場所ないんじゃないかってレベル。
ユーザーフレンドリーを徹底しているスタンスが伝わってきて、個人的には非常に好印象でした。
悪かった点
あんまりない推理要素
ゲーム概要の部分でも似たようなことを書きましたが、率直に言って本作における推理要素は薄味です。
そもそもゲームシステムからして、現場を調査したり聞き込みをしたりして能動的に情報を集めるといったようなことができないため、断片的に得られた情報からなんとなく推測するぐらいしかできません。
良く言えばお手軽、悪く言えば味気ないという感じ。
また、推理パートのツッコミどころも割と多めです。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、
「よくとっさにそんなことできたな」
とか
「今まで一度くらいそういうことあったでしょ」
とか
「すれ違いコントかな?」
など。
そのため、しっかりとした推理ゲームを期待していると間違いなく肩透かしを食らうでしょう。
本作は百合ゲーであるというのは承知していましたが、思った以上に推理要素が薄かったのはシンプルに残念でした。
「推理スル」というタイトルがなかったら多分手を出してなかっただろうなと思います。
トゥルーエンドの条件がややシビア
本作は全4話構成で、各話ごとに1つか2つバッドエンドがあり、最後の4話まで選択肢を間違わないとノーマルエンドとトゥルーエンドに到達するんですが、このトゥルーエンドに到達するための条件がちょいシビアです。
※バッドエンドは推理部分で間違った選択肢を選ぶと直行
というのも、(これもゲーム概要で少し触れましたが)トゥルーへ行くには1話から4話で発生する選択肢全てにおいて適切なものを選ぶ必要があるのに、推理以外の選択肢はどれを選んでも物語が進行してしまう仕様となっているためです。
1個でも選択肢を外しているとノーマル確定となります。
これのおかげで、表面上は滞りなくストーリーが進んでいるのに、トゥルー到達に必要な選択肢を選んでいないせいで最終的にノーマルエンドで終わってしまうということが多々ありました。
しかもストーリー前半の選択肢は「それが正解なの?」というのも一部混じっているため、難しさに若干拍車をかけています。後半は分かりやすいですが
幸い、UIが非常に快適なのでトライアンドエラーはそんなに苦ではなかったものの、どうしてもトゥルーエンドに辿り着けず、泣く泣く攻略サイトに頼りましたね。
ガチ初心者にはちょっと面食らう百合描写
百合ゲーというのを事前に把握していたとはいえ、想像以上に濃厚な描写が多く、初めて百合ゲーをプレイした自分からすればちょっと面食らいました。
期待していた推理要素があっさりだっただけに余計そう感じてしまったなと。
流石に直接的な描写こそありませんが、普通にloveの意味で好きって表現が出てくるし、想像以上にガッツリ恋愛模様を描いていて全く知らなかった世界を垣間見た心地ですね。
あとプレイ前は友情と愛情が曖昧な感じになってるのかなと思ったら、そこははっきり区別されているばかりか性愛の域に達してる描写もあったりして、「スイッチって今時分こんなゲームもできるんだな・・・」と時代の流れを感じた次第です。
しかもこれでCERO:Bってマジかよ・・・。
というように百合ゲー初心者からすれば色んな意味で濃いテイストで、批判を恐れず言うなら話についていけない場面が結構ありました。
ゲームの中の話ではあるものの、なんだかすごく遠くの世界のような気がして感情移入というか物語への没入が難しかったですね。
幸か不幸かボリューム自体は控えめで、全ての要素をコンプしても6時間程度で終わるのでクリアできましたが、もしそれ以上かかるなら途中で断念していたかもしれません。
おわりに
以上、『神田アリス も 推理スル』のクリア後レビューでした。
百合ゲー成分が多くを占めるゲームです。
自分のように百合ゲーが初めて、あるいはほとんどしたことがない場合はある程度覚悟しておいた方がいいかと。自分は覚悟不足でした。
また、繰り返しになりますが、推理やミステリーに関してはあまり期待しない方がいいです。
本作はあくまで「そういった要素が多少ある百合ゲー」なので。
ここを押さえておかないと、人によっては「あれ?思ってたのと違う」となるかもしれません。
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