千里の棋譜クリア後感想 将棋を題材にしたミステリーADV/将棋初心者にも自信を持っておすすめできる一作【ネタバレあり】

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はじめに

ここでは、『千里の棋譜~現代将棋ミステリー~』をクリアした感想をつらつら書いていきたいと思います。

※クリア後の観点から書いているのでネタバレ注意です

本作は2020年にKEMCOから発売されたアドベンチャーゲームで、2015年に配信されたスマホアプリ版のものに新たなストーリーや新規要素を加え、コンシューマーに移植された完全版となっています。

ゲーム概要

ストーリー

ストーリーは二部構成。

前編後編ではなく、それぞれ独立した一つの物語が展開される。

一部

フリーライターの一ノ瀬歩未は、将棋界の内情を記事にするため幼馴染で奨励会(プロ棋士養成機関)三段の長野ちょうの圭の力を借り、将棋連盟の会長や所属する棋士らへの取材を敢行する。

だがその過程で、会長宅への強盗未遂事件、将棋界の一大スポンサーによる名人(棋士のトップ)対AIの頂上決戦の開催、名人の失踪など将棋界を揺るがす様々な出来事に関わっていく。

そして、その過程で「千里眼」という将棋界を揺るがす存在の正体にも迫っていくことになり・・・。

二部

千里眼に端を発する騒動が終結してからしばらく。

プロ棋士を決める三段リーグが始まり、火花を散らす三段の奨励会員たち。

だがリーグ後半、優勝候補であり縦横無尽の強さを見せていた北条草太三段が突如棄権し、奨励会を退会。そして行方をくらましてしまう。

北条と親しかった長野は歩未や協力者とともに調査を開始。

すると将棋界でまことしやかに囁かれる「神隠し」の実態、そして23年前に幻の一局となった名人戦の存在など、将棋界に隠された真実に触れていき・・・。

本作の特徴

将棋が題材のアドベンチャー

本作は将棋を題材とし、将棋界で起こる事件や棋士達のぶつかり合いを描いたアドベンチャーとなっている。

そのため随所にわたり将棋に関する話題が散りばめられており、将棋を基にして作られたクイズや事件 も多い。

というように書くと将棋ファン以外お断りな印象を受けてしまいそうだが、本作は解説が非常に充実しており、駒の動かし方から実際の戦術、棋士の仕組みや歴史といった将棋の様々な事柄が一から分かるようになっているので、将棋初心者にも優しい作りになっている

また、要所要所で出題される将棋のクイズもスキップできたり丁寧なヒントが聞けるため、将棋に浸りたい人も物語だけ追いたい人も問題なく楽しむことが可能

オーソドックスなゲーム形式

本作はアドベンチャーゲームとして非常にオーソドックスな仕組み。

基本的にはキャラ同士の会話を読み進めていくが、時には会話内で選択肢が発生したり、色々な場所に赴いて情報収集をしたり、得られた情報をもとに推理をしたり、というように基本に忠実な作りとなっている。

アドベンチャーをよくプレイしている人なら違和感なく入っていけるだろう。

感想

良かった点

重厚なストーリー

本作はストーリー一本勝負のADVということもあり、物語は良くできていて面白かったです。

特に良かったなと思うのは、一部二部ともに明確な悪が存在しない点。

対立こそありますが、それは各々の立場や信念がぶつかることからくるものであって善悪の二元論的な対立ではないため、どのキャラにも感情移入がしやすく、モチベーションを失うことなくゲームに没頭できました。

単純な二項対立ではない分、物語に深みが出ていたと思います。

また、将棋にかける棋士達の描写も非常に丹念に描かれていました。

とりわけ二部は三段リーグというプロを決める戦いが繰り広げられるわけですが、このリーグはプロになれるまでずっと挑戦できるわけではなく、25歳までという年齢制限があったり、一定の成績を維持していないと降格させられて挑戦資格そのものを失ってしまうなど、かなりのリスクを背負った上での戦いなので、こっちは見てるだけなのに胃がキリキリすることが多かったです。

自分は一ゲームのオンライン対戦ですらごっそり精神力を削られるレベルの豆腐メンタルなので、現実でも実際にこんな戦いをしてる人がいるのかと思うとただただ頭が下がります。

よく「努力をし続けられること自体が才能」なんて言葉を聞きますが、ほんとその通りですね。

そうやって常人には真似できないほどの情熱を傾けられるからこそプロは尊敬を集めるし、人々を惹きつけるんだなぁと改めて思います。

触れ込みとしては将棋ミステリーと称されている本作ですが、どちらかと言えば迫力ある人間ドラマの方に魅力を感じましたね

将棋初心者にもわかりやすい

タイトルやパッケージからも分かるように、本作は将棋要素が強い、というよりそれがメインなわけですが、将棋初心者にも非常に分かりやすい作りになっています。

遊戯としての将棋に関する基本的な概要(ルール・駒の動かし方・戦術など)や、段位やプロ棋士などの制度な仕組みや実態などの解説が充実しているので、これ一本でかなり将棋のことが分かるでしょう。

自分は詰め将棋をちょいちょいやるぐらいで対戦はCPUの初級に勝てる程度のレベルですが、そんな自分でもある程度人に説明できるぐらいには将棋知識を身につけられました。

ただ、ストーリーでは実際の対局を最初から最後まで追うことが何回かあるんですが、正直ついていくのがやっとで内容を完全に理解するのは難しかったですね。

一手一手ノーカットで対局を追う

その上、作中では一手一手の思考時間が省略されて目まぐるしいスピードで対局が進んでいくので尚更難しい。一旦停止がほしいレベル。

とはいえ、要所要所で登場人物達がバトル漫画さながらの解説をしてくれるので、「ちゃんとは分からないけど今勝ってるんだなor負けてるんだな」というのは分かるし、何よりしっかり面白いです。

ス〇ードワゴンかな?

(別の遊戯を出してしまいますが)例えるなら「囲碁はよく知らないけど『ヒカルの碁』の面白さは分かる」的な。

なので全部は分からなくてもそれで面白さが損なわれるということはないでしょう。

安定感のあるBGM

本作のBGMは、『逆転裁判』シリーズなどで有名な岩垂徳行さんが手掛けています。

実のところ自分がこのゲームをプレイしようと思ったのも、岩垂さんがBGMを担当していたからというのが大きいです。

なので音楽に関しては大いに堪能できました。

事態が進展する時や急転する時、クライマックスに向かっていく感満載のものなど、場面に即してこちらの感情を搔き立ててくるようなBGMはまさに秀逸の一言。

岩垂イズムとでも言いましょうか、あぁこれぞ岩垂さんという曲が多かったです。

個人的には「果敢なる勝負手」が特に一番好きですね。

優雅さと猛々しさが同居してて、棋士達の「所作にこそ出さないものの勝利への執念を感じさせる一手」という感じがすごくいい。

なんとなく『逆転検事』1・2の「追究」を彷彿とさせます。両方をいいとこどりしたような印象。

トロコンが容易

本作はトロフィーがストーリーに関係するものが9割、残り1割はバッドエンド到達で入手できるものというように余計なやり込み要素がほぼなく、トロコンがしやすいです。

所要時間もそこまで必要とせず、ストーリークリアで大体20時間、1からバッドエンドを回収しようとしても30分程度で終わると比較的短時間でプラチナが取れます。

なのでトロコンという観点から見てもおすすめです。

悪かった点

二部のテイスト

一番気になった点。

あらすじを大まかに書くと、一部は「千里眼という将棋界を揺るがす存在を探し出す」、二部は「リーグ戦が繰り広げられる中、神隠しや記録から抹消された過去の名人戦などの知られざる真実を暴く」という内容なんですが、

将棋がこの世に存在し続ける限りいつかは直面する問題を描いた一部に対して、二部はSF要素と陰謀論が混じったような感じで大分テイストが異なります

まぁ一部は一部で千里眼の正体が(白文字反転:将棋のありとあらゆる戦型や戦法を記した棋譜)という現実には存在しないものではありましたが、万が一あったとしても別に不思議ではないというか、自分は「本当にあったらあったで面白いな」とロマンを感じたし、なかったとしても将棋にとって避けられない問題を示唆するものに変わりないのでリアリティがありました。

が、二部の場合、神隠しの実態が実は(白文字反転:政府にとって有能な人材をスカウトするためのシステム)だったり、AIどころか(アンドロイド)が登場したりとちょっと一部と毛色が違い過ぎててついていけなかったです。

一つ一つの要素は面白くはあるんですが、別にわざわざこの作品に盛り込まなくても・・・という感じ。

二部は協力者や関係者を交えて幻の名人戦を追う展開は終始サスペンス調でハラハラ、三段リーグは勝負師達の将棋に懸ける思いのぶつかり合いで胃がキリキリ、という具合に見所があっただけにちょっと残念でした。

事前に一部と二部ではテイストが異なるという前情報を知っていれば、受ける印象はまた違っていたかもしれません。

とまぁとやかく書きましたが、この辺は好みの問題ですかね。

自分のように二部よりも一部の方が好きという人もいれば、その逆という人もいるでしょうし。

ちょいちょい声優の演技が怪しい

感嘆表現はやや棒気味

地味に気になった点。

本作は要所要所でボイスが入るんですが、全体的に声優の演技が棒読みとまではいかないものの、素人目に見ても正直「台詞読むのにいっぱいいっぱいって感じだな」と思うことはありました。

そういう傾向が顕著だったのは、一部では森方・七澤、二部では北条・杏樹の声優さんですかね。

この4名は、台詞上ではキャラが怒ったり悲しんでいたりしていても声の調子が常に一定だったなという印象です。

なんというか、棒読みとかではなく淡々とキャラの声でしゃべってた感

ただこのゲーム、設定でボイスをOFFにすることができるんですが、個人的にはそこまでするほどではありませんでした。

ちょっと棘のある言い方になりますが、ある意味絶妙なラインを突いていた演技だったのかなと。

イラストのタッチの差

左がオリジナルキャラの歩未、右は糸谷八段(実在する棋士の方)

本作は実在する棋士の方が何人か登場するんですが、オリジナルのキャラと違い実在する方たちの絵のタッチが妙に写実的です。

オリジナルの方は漫画タッチなだけにこのちぐはぐ感は如何ともしがたいものがありました。

ただし、二部で活躍する香川愛生女流三段(現女流四段)はオリジナルキャラに近いタッチです。

一番左が香川さん(実在の女流棋士)

あえてタッチの差を付けることで実在する人物なのか分かりやすくしているという意図はあると思いますが、ちょっと差を付けすぎかなと。

まぁ慣れはするんですけどね。

おわりに

以上、『千里の棋譜』のクリア後レビューでした。

初心者・経験者問わず、将棋に興味がある方なら間違いなく楽しめるであろうゲームです。

将棋を上手く絡めたストーリー、終始展開される重厚な人間ドラマなど全体的に手堅くまとまっています。

また、実際に対局はできませんが上でも述べたように解説が豊富で、詰め将棋が80問収録されているので、これ一本である程度将棋に関する知識は身につくでしょう。

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