はじめに
ここでは、「J.B.ハロルドの事件簿 マーダー・クラブ」をクリアした感想をつらつら書いていきます。
※クリア後の観点から書いているのでネタバレ注意です
本作は、1986年にオリジナル版が発売され、その後何度かの移植を経て2017年スイッチやスマホアプリに移植を果たすという往年の名作と呼ぶにふさわしいゲームとなっています。
ゲーム概要
ストーリー
1985年、アメリカのリバティタウンという小さな田舎町で殺人事件が発生する。
当初はすぐ解決できるかに思われたが、目撃証言や物的証拠の乏しさから捜査は難航。
さらに、この事件を担当していた刑事が病に倒れるというアクシデントも起こってしまう。
そこで先任の刑事は、後任としてハロルドという寡黙な一匹狼の刑事を指名。
後を託されたハロルドは、独自の捜査で事件を追っていくのであった。
本作の特徴
直球王道の推理アドベンチャー
本作はコマンド選択型アドベンチャーの形式をとっており、全編に渡りコマンド選択でゲームを進行する。
王道スタイルのゲームであるため、推理ゲームをよくやるプレイヤーはもちろん、この手のゲームをそこまでやったことない人でも問題なく入っていけるだろう。
基本的なゲームの流れとしては、
①聞き込み
②家宅捜索
③逮捕・取り調べ
の3つ。
これを真犯人を見つけるまで繰り返す。
推理ADV黎明期の作品にも関わらず、逮捕や取り調べができるのは非常に斬新。
聞き込みはデフォルトでできるが、②と③に関しては現実のように手順に則る必要があり、ある程度外堀を埋めた上で検事から許可を取らなければならない。
なお、これらの許可はゲーム上で「〇〇の許可を取れるようになりました」というアナウンスがあるため、いつ許可を取るかというタイミングに悩む必要はない。
が、本作はフラグ建てを丁寧に行わなければならず、しっかりと聞き込みをしないと②と③には進めないようになっている。
その上、聞き込みの内容は捜査が進むたびに変化するケースがままあるため、一度話を聞いたからと言って放置しているとフラグが建たない。
なので、関係者から根気強く話を聞いて回る必要があり、情報は足で稼ぐを地で行くゲームとなっている。
最悪どうすればいいか分からなくなった場合、関係者総当たりで聞き込めば何とかなるが、人数の多さ故非常に手間がかかるので、自分なりに捜査状況を把握しておくと楽にゲームを進められるだろう。
複雑な人間模様
本作には総勢30名以上のキャラが登場し、そのうちおよそ9割が容疑者候補という割ととんでもないことになっている。
この関係上、ゲーム序盤で真犯人が分かることはまずないだろう。
その上、被害者に近しい間柄の人物が多く、被害者の遺族、被害者の配偶者とその親族、被害者の兄弟の配偶者の親族、というように捜査線上に上がる容疑者は非常に複雑。
また、被害者も善良な人間とは言えず、遊び人で女好き・有能だが仕事ぶりは悪辣という人柄で、恨みを買いやすいタイプである点も曲者。
これにより被害者を恨む、あるいは恨むまではいかずとも快く思っていない容疑者がそれなりに多く、序盤は大体の人間が怪しく見える。
と、ただでさえ複雑な人間模様でありながら、本作には人物解説や人間関係を図で表したものが一切ないため、これらの関係性や人となりを自力で把握しなければならない。
というように、昔のゲームなだけあって良く言えば硬派、悪く言えば不親切という仕様になっている。
が、この不親切さが却ってロールプレイへの没入感を高めており、プレイヤーは行き届いた神の視点からではなく、ハロルドという一人の刑事になり切り、地道に捜査していく過程を楽しむことが可能。
感想
良かった点
先を読ませないストーリー
一番良かった点です。
とにかく先が読めない・読ませないという制作者の意志を強く感じた作品でした。
一見関係ない過去の未解決事件が重要な意味を持っていたり、人間関係の綻びが重要なヒントかと思ったら単なるミスリードだったりと、制作側の思惑通りに振り回されました。
また、起承転結も非常に滑らかで、これと言ったツッコミどころも(少なくとも個人的には)なく、正直数十年前に出されたゲームとは思えないクオリティです。
流石何度も移植されてるだけあります。
ゲームオーバーがない
率直に言って本作の難易度は割合高めで、かつこれといったヒント機能が全くないので、次に何をすればいいか分からなくなることは多いものの、ゲームオーバーという概念はありません。
そのおかげで、どこかで証言を聞きそびれたせいで詰むなんてこともないです。
なので、根気強くやれば必ずクリアできるようになっています。
悪かった点
細かい不満
ストーリー部分に不満はありませんでしたが、細かい部分―特にUI面で気になった点は結構ありました。
以下その点を挙げてみます。
・Bボタンで前の選択肢に戻れない
→キャンセルしたい場合はイチイチ戻るを選択しなければなりません
・一旦自分のデスクに戻らないと捜査状況の確認ができない
→現在の進行度を%で表示してくれるので、折を見て確認したいところですが、これもイチイチ自分のデスクに行かないと見れないのが手間でした
・一つの質問でも2回聞かないと重要な事実(フラグ)を引き出せないことがある
→このため、重要そうな会話は聞き直さなければならないんですが、ゲーム中ではこれといったヒントはなく、2回聞くかどうかの判断は自分でする必要があります
・自分のデスクから出ると必ず上司に小言を言われる
→うるせぇバーカ!
・証拠品を見つけても一回一回取らないといけない
→発見と入手がセットではなく、「発見」→「入手」と2回行動せねばならず、単純に面倒でした
・捜索が可能になる=必ず証拠が見つかるわけではない
→家宅捜索の許可が下りても、ちゃんとフラグを建てておかないと有益な証拠が見つけられないという場合が多かったです(許可下りたんなら見つけられてもいいのでは?)
というように、バグこそないものの不便に感じる部分は多かったです。
おわりに
UI面での不満はありますが、全体として非常に良質な推理ゲームでした。
一概に比較はできませんが、本作をやる前にクリアしたゲームが推理とは名ばかりの作品だったので、尚更そう思いましたね。
ちなみに、正確には計測したわけではありませんが、クリア時間は大体6時間半ぐらいでした。
ゆっくりやっても半日あればクリアできるという感じですね。
スイッチを持ってて何か手頃な推理ゲームを探しているのであれば、本作はかなりおすすめです。
続編については↓から
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